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多様性から新たな価値 働き方改革、男性にも刺激<企業の「女性力」>2


この記事を書いた人 アバター画像 琉球新報社
建設現場を経験し、現在は積算業務などに携わる、仲本工業建築部の神谷彩乃主任=23日、沖縄市(提供)

 ■積極登用

 代表的な「男性職場」である建設業界だが、近年は女性を積極的に登用する事業者が増えてきた。県労働力調査によると、2020年の県内建設業の就業者数は前年比4・2%減の6万9千人に落ち込んだが、うち女性は前年同様の1万人を維持している。

 女性の進出で、工場内の女性専用設備や制度の導入が推進され、建設業界では徐々に変化が起きている。女性の活用は業界の人手不足の中で、男性に替わる労働力というだけではない。多様性を受け入れることで新たな企業価値が生まれ、働き方改革による生産性向上や将来を担う人材の確保につながる効果がある。

 「小さい頃からものづくりが好きだった。自分が携わることで、形になり、みんなに見てもらえる。だから、建築の道に進んだ」

仲本工業が以前、工事現場で設置した女性トイレ=南風原町(提供)

 沖縄市の仲本工業で建築部積算室に所属する神谷彩乃主任(31)は、1級建築施工管理技士や建築積算士などの資格を有し、建築の第一線で活躍する。

 ■感性

 2011年に入社し、男性職人に交じって14年まで現場監督として働いた。建設現場に女性の技術者や職人は少なく、女性専用のトイレもほとんど設置されていない。「当たり前のようにトイレを男性と兼用していた」と振り返る。

 神谷さんの感性が、これまでの現場になかったノウハウを生みだし、発注者から高く評価されたこともある。12年に携わった盲学校建設工事現場では、視覚障がい者と打ち合わせする際に立体模型を用いるなど創意工夫した。この工事で仲本工業は後に現場表彰(県知事表彰)を受けた。

 3児の母となった神谷さんは現在、本社勤務で積算や建築企画設計の業務に携わる。活躍の場が変わっても自身を磨き続けて業務に取り組む。

 ■バロメーター

 仲本工業は現在、グループ全体の従業員230人のうち、女性社員は約30人を数える。仲本豊社長は「建築・土木の専門課程に進学する生徒数が全体的に減っている。将来の人手不足の懸念から、建設関係の仕事をしてみたい人を男女に関係なく積極的に採用していく」と語り、採用した社員が働き続けていける環境の整備に努める。

 女性がより働きやすいように女性専用トイレや休憩室を設置したほか、タブレット端末を活用した工程管理や溶接ロボットシステムの導入などで業務の効率化を図り、家庭と仕事を両立できる労働時間の削減も進めている。意欲ある女性技術者などの積極的な受け入れは、男性社員にも刺激を与えるという。

 女性の採用応募は、求職者から選ばれる魅力ある企業かどうかを測るバロメーターともいえる。仲本社長は「建設業は元々男性が中心の社会で、多くの面で女性が働きにくい。一つ一つ環境を整備し、会社を担う社員が気持ちよく働けるようにしていく」と意気込む。 (呉俐君)