第46回沖縄県俳句協会総会は、コロナ禍の自粛対策のため集会は中止となった。第14回小熊一人賞は、上運天洋子、太田幸子の2人へ授与された。功労賞は島袋直子、前原啓子、前田貴美子の3人が受賞した。
琉球新報社主催の第42回遠藤石村賞は前原啓子、俳壇賞は中本清が受賞した。
県俳句協会(県俳協)主催の春季俳句大会は、県知事賞「みな違ふいのちの音の種袋」(いぶすき幸)、琉球新報社賞「基地見えて見えぬからくり春寒し」(金城真理子)、沖縄テレビ放送賞「立春の野を広げゆく鳶の声」(比嘉美代子)、協会賞天賞は、筒井慶夏が受賞。大会および当日句会は中止とし、事前投句作品のみの発表となった。夏季俳句大会も中止。秋季俳句大会も事前投句のみの選とした。県知事賞「魂迎ふ草の湿りを身に移し」(中本清)、沖縄タイムス社賞「十・十忌の空鎮めたり旗頭」(宮城勉)、琉球放送社賞「牛飼ひになると汗して五歳の児」(石田慶子)、協会賞天賞は前田貴美子。
第5回「島守忌」俳句大会(島田叡氏事跡顕彰期成会)は、6月13日受賞作品を発表した。県知事賞以外は沖縄の受賞者のみ記す。
一般の部は、県知事賞「島守忌の風しろがねの韻きあり」(いぶすき幸)、糸満市長賞「相照らす摩文仁の星や島守忌」(伊是名白蜂)、琉球新報社賞「島守忌戦史に残る人の道」(本村隆信)、期成会会長賞「死者眠る土は語り部島守忌」(村田典枝)。
高校生の部は、県知事賞「ほほつたう涙で学ぶ島守忌」(小松原深月・兵庫高校)、糸満市長賞「海風が帽子をさらう島守忌」(久山はるか・那覇高)、県高等学校文化連盟会長賞「島守忌太平築く糧となり」(新垣柚・那覇高)、琉球新報社賞「過去と今縫い目がつなぐ島守忌(新垣蓮・那覇国際高)、期成会会長賞「雨露に光りし月桃島守忌」(座安健太朗・那覇高)。
島守忌俳句大会は、島田叡知事、荒井退造警察部長の功績を語り継ごうと、「島守忌」「島田忌」「荒井忌」を季語に詠む俳句を募ってきたが、プレ大会を含む5回の開催で一定の浸透が図れたとして今回にてファイナルとした。
第19回沖縄忌俳句大会(県現代俳句協会)は、大賞「六月の風は未来へ惨禍越え」(渡嘉敷敬子)、「たましいを掬いし両手夕焼ける」(座安栄)の2人が受賞。佳作は池宮照子、百名温、嘉陽伸、ほか5人が受賞。
第6回いわき海の俳句全国大会。佐怒賀直美特選「星とんで恐竜の骨眠る丘」(松尾志津子)、小島健・藤田直子入選「海光の一片として燕来る」(山城久良光)、小島健入選「月仰ぐよき事一つあればよし」(石田慶子)。
俳人協会創立60周年記念第15回九州俳句大会(大分県支部)。TΟSテレビ大分賞「土を咬む榕樹の気根沖縄忌」(金城真理子)、岸原清行秀逸「平和像拝し摩文仁の青嵐」(古波蔵里子)、石川誠一特選「紅色の珊瑚産卵夏の月」(澤聖紫)。その他選者佳作に、金城真理子、伊是名白蜂、平良喜美子、与儀啓子、筒井慶夏が入賞した。
「WA」(岸本マチ子)は昨年93号をもって終刊したが、6月に新第1号(上地安智代表)を発行した。
各俳句総合誌投句は、特選、推薦、秀逸、佳作入選者を、県俳協会員を主に順不同であげる。石川宏子、仲間文子、筒井慶夏、平良幸子、大城百合子、石田慶子、百名温、渡嘉敷皓太。
第15回角川全国俳句大会都道府県賞「水牛の牛車解かるる驟雨かな」(仲間文子)、正木ゆう子秀逸「洗骨の最後の島や鷹渡る」(広瀬元)が受賞した。
公益社団法人・俳人協会第44回新人賞を、安里琉太『式日』が受賞した。協会新人賞は、50歳以下の会員の第一句集を選考対象とする。20代の安里琉太は歴代最年少受賞作家となった。俳句文学館(俳人協会)4月号の「顔」で、西村麒麟が「美に惹かれながらも溺れず、言葉を使いこなすことこそが技巧であることをよくわかっている俳人」と評している。『俳句』誌上では、小川軽舟、黒岩徳将、田島健一、鴇田智哉、西村麒麟が琉太俳句を取り上げている。3月に帰省し活動の場を沖縄に移す。7月~12月、琉球新報の「落ち穂」に執筆中である。
結社賞は「りいの賞」を稲嶺有晃が受賞した。
句集出版は、石田慶子句文集『青き踏む』。澤聖紫文芸選集『沖縄の心』。安里琉太、酢橘とおるら5人による同人誌「滸」3号刊。
「地球の生物多様性詩歌集」(コールサック社)前田貴美子20句。県内から6人が発表。「十年目の今・東日本大震災句集・わたしの一句」(宮城県俳句協会編)に、百名温・辺野喜宝来、前田貴美子が載る。
「うらそえ文芸」第25号に上間芳子、大湾美智子、當間タケ子、宮城涼、与儀啓子が各20句を発表する。
俳句総合誌への発表は、「俳句四季」5月号、石田慶子5句、7月号、垣花和、上運天洋子、砂川紀子。「俳句界」5月号「万象」20人の一句に前田貴美子。「俳壇」5月号、「WA」会員の10句。安里琉太7句。8月号、上運天洋子5句。12月号、年末アンケートに安里琉太。「俳句」4月号安里琉太10句。論考「ただごと論史」安里琉太。
「ウエップ俳句年鑑」に石田慶子、辺野喜宝来、前田貴美子が各自選7句を発表。「俳壇年鑑」、注目俳人と題する鼎(てい)談が安里琉太を取り上げ、神野紗希がベスト句集5冊に『式日』を選んだ。同年鑑、自選作品集に、県俳協会員は、石田慶子、筒井慶夏、百名温、大嶺清子、前田貴美子、安里琉太が出句。
故小熊一人氏夫人、小熊高子氏が9月25日逝去された。氏はじめご家族からは県俳協へ毎年寄付金を頂いており、その基金をもって「小熊一人賞」設立が成(な)った。篤(あつ)いお志に心より御礼申し上げますとともに、ご冥福をお祈り申し上げます。
公益社団法人・俳人協会の幹事に前田貴美子が委嘱される。(俳句文学館告示)
ままならぬ日々の中にも小さな日だまりがある。俳句の心には、小さな喜びを見つける力がある。
本稿は県俳句協会会員の動向を中心に記した。県内俳句界の十分な報告に至らなかったことをおわびする。 (敬称略)
(県俳句協会副会長)
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まえだ・きみこ 1946年埼玉県生まれ。沖縄が日本に復帰する前年より那覇市在住。87年作句開始、「風」入会。93年「風」同人。2002年「風」終刊に伴い、「万象」創刊同人。09年「りいの」創刊同人。風賞。万象5周年俳句賞。琉球俳壇賞。小熊一人賞。遠藤石村賞。句集『ふう』。俳人協会幹事。県俳句協会副会長。