学生の頃、バスケットボール国内トップリーグの実業団入りは極端に狭き門だった。「10チームもなくて、大学で活躍するエリートじゃないと入れない」。全国トップの選手ではなかった金城茂之さん(37)は「バスケは大学まで」と感じていたという。
潮目が変わったのは大学4年時の2007年。大学で転向したガードが定着した頃、琉球ゴールデンキングスが誕生したことが耳に入ってきた。「もうちょっと続けたい」と合同トライアウトを受け、練習生を経てキングスと契約した。
キングスはbjリーグ参戦2年目の08―09シーズンに初優勝し、自身はMIP賞を獲得した。
「街中で声を掛けられることが増えてプロの自覚が芽生え、応援に応えようという気持ちも湧いてきた」。内面や周囲の環境はがらっと変わった。
Bリーグでは今も多くの県勢ガードが活躍する。bjリーグ設立以降、選手の裾野が広がり「沖縄に多い、背の低い選手の生きる道ができた」とうれしそう。
FC琉球や琉球コラソンも設立され、沖縄にプロや実業団スポーツが根付いた2000年代。金城さんは「子どもが地元チームを目指せる環境は大きい」と、競技力向上の一端になっていると見る。
(長嶺真輝)
きんじょう・しげゆき 1984年11月23日生まれ、37歳。北中城高、大東文化大出。仙台89ERSアシスタントコーチ。琉球ゴールデンキングス創設から12年所属した“ミスターキングス”。