島の人救ったソテツの実に感謝 児童ら収穫・加工を体験 鹿児島・沖永良部


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 【沖永良部】鹿児島県和泊町立国頭小学校でこのほど、児童たちがソテツの実の収穫加工体験を行った。小中高校が学校ごとに独自の授業を行う総合学習の一つ。同校では「ソテツ大発見! わちゃえらぶ島」と題して、小学3年は毎年、1年を通してソテツの成長に応じて実の収穫や毒抜き作業、成長観察やおもちゃ作りなどを行っている。

千枚通しでソテツの実の中身を取り出す児童たち=和泊町立国頭小学校

 この日は収穫した実の中身を取り出し細かく砕く毒抜きの前工程を行った。児童たちは押切りで殻を割ったあと、千枚通しを使って上手に中身を取り出し、「おいしくなれ」と大きく声を掛け、刃の付いた専用器具で実を押し砕く作業を楽しんでいた。担当の佐藤結花教諭は「私も島出身だが初めての体験で、作業で道具がどう変わるのか興味深かった」と話す。

 講師は国頭出身の佐々木鐵雄さん。「今年で14回目。2000年にソテツを植えたらその7年後に花が咲いたことをきっかけに、当時の子どもたちと相談して始めた」と、いきさつを振り返る。

 ソテツは過去何度も島民を救ってきた救荒食物。特に潮風害を受けやすい国頭では作物が育ちづらく、代わりに海水を煮詰めて作った塩を米やみそなどに物々交換してきた。しかし、1886年にあった大飢饉(ききん)や、戦後の人口急増などでは食べ物が不足し、ソテツの実や、時には幹や根も毒を抜きおかゆにして食べたという。

 そんなソテツへの先人たちの思いを引き継ぎ、佐々木さんは06年より毎年感謝祭を行っている。「食料、たき木、砕いて土にすき込めば緑肥にもなる。ソテツを通じて、子どもたちには額に汗を流し島の勤勉な島民性を学び、農業を守ってほしい」と願いを語った。

 感謝祭は同集落でソテツの日とされる旧暦1月2日前後に行われる。児童たちはソテツの成長記録や葉などで作ったおもちゃを発表し、「たちがん」と呼ばれる羊羹(ようかん)に似たお菓子やおかゆを作って参加者に振る舞う予定だという。

 (ネルソン水嶋通信員)