認証店の辞退やむなし…沖縄県、不満続出で「苦渋の決断」 制度崩壊の懸念も


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認証取り消しを決め、店舗入り口に貼ったステッカーを剝がす飲食店主=8日、那覇市内(高辻浩之撮影)

 県内全域が9日から「まん延防止等重点措置」に移行するが、県の時短営業要請に応じた飲食店に支払う「協力金」の額を巡り、混乱が続いている。県は「苦渋の判断」として認証店の辞退を受け入れ、非認証店扱いで協力金を支払う方針を示したが、これまでコストをかけて認証を取得してきた事業者の不公平感や、認証を事業者自らに返上させることへの当惑は収まらない。感染対策と経済活動を両立させるために創設した県の「認証制度」自体を崩壊させる懸念がある。

■辞退の動き加速化
 
 重点措置に移行する前日の8日、那覇市内のある飲食店では、事業者が店頭に貼られた県の「認証ステッカー」を剝がしていた。店主の男性によると、週明けにも認証店の辞退を県に申し出る考えだ。男性は「申請に手間もかけたのにメリットがない」と述べた。

 6日から店を閉めているという別の認証店の事業者も「非認証店より協力金が低いのは納得できない。期間中に店を開けても客は見込めないので、休業要請を出して全て一律の補償額とするべきだ」と訴えた。

 重点措置中の協力金を巡り、営業時間や酒の取り扱いに違いはあるが、感染対策をとった認証店の方が、非認証店よりも協力金による補償額が低い。このため「認証をなかったことにして、非認証店として協力金を申請できないのか」といった訴えが県や業界団体に相次いでいる。

 認証制度は、飲食店がアクリル板の設置や座席の間隔、換気などの感染対策を十分にとっているかなどを県が確認し、実施が認められた店舗にステッカーを交付する。県は感染対策がとられた認証店の利用を県民に呼び掛け、国も「Go To イート」など需要喚起策で県の認証を参入条件としていた。

 県は事業者の声を踏まえ、14日までの猶予期間中に認証を辞退すれば、さかのぼって非認証店と同じ協力金を支払うと周知を始めた。担当者は「事業者の不利益につながるのであれば、(辞退を)苦渋の決断で受け入れざるを得ない」と述べる。

 そもそも、なぜ認証店と非認証店で協力金に差があるのか。

 県の協力金の額は、内閣府地方創生推進室が昨年11月に各都道府県に通知した金額に基づいて設定した。この通知は、協力金の財源となる地方推進臨時交付金の「協力要請推進枠」の取り扱いを明記したもので、県によると「協力金の額を自治体が変更することができない」としている。

 通知で、政府はワクチン接種証明やPCR検査による陰性結果を示して経済活動を継続する「ワクチン検査パッケージ」を活用することで、認証店では営業の制限を緩和できると明記し、その方針に基づいて協力金の額を設定していた。

■政府方針の破綻

 一方で、沖縄では「オミクロン株」が想定以上のスピードで流行し、ワクチン接種者が感染するブレークスルー感染も多発している。県は重点措置の適用後の、ワクチンパッケージは使用しないと決定した。

 感染の波が来ても経済活動を一定程度回していくという政府の方針は、オミクロン株が急拡大する実情とそぐわず、制度の弊害が出ているとの見方もできる。

 認証店の時短協力金が非認証店より低くなる問題については、沖縄と同様に9日から重点措置に移行する山口、広島両県の知事も、国に改善を訴えている。

 県飲食業生活衛生同業組合は、これまで協力金を継続して受給している点や「Go To イート」に参加するには認証店登録が必要なことも考慮し、今後も認証を推奨する立場をとる。

 鈴木洋一理事長は「早く沈静化すれば影響は少ない。組合の事業者には冷静になるよう呼び掛けている」と話した。
 (池田哲平まとめ)