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沖縄のマツキヨ店長は全員女性 サンエー、出産後のキャリア継続「個別で対応」<企業の「女性力」>5


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レジでお客さんに対応する島袋愛店長(右)=マツモトキヨシしおざきシティ店

 県内に29店舗展開するドラッグストア大手「マツモトキヨシ」。店長は全員女性が務めている。従業員も薬剤師に一部男性がいるものの、原則は全て女性だ。女性客が多いことや他社との差別化策として、県内のマツキヨをフランチャイズ(FC)運営するサンエー(宜野湾市、上地哲誠社長)が女性だけの部署として設置している。

 衣料、食料、家電に次ぐもう一つの売り上げの柱を育てようと、マツキヨのFCを始めたのが2006年。店舗数は毎年増え、事業は拡大し続けている。「マツキヨはチームワークがいい。労働時間が短く、業績もいい。まだ綱渡りではあるが、だいぶ人材が育ってきた」と、サンエー人財育成室の玉城むつ子室長は説明する。

連帯感

 「子育て中や子育て経験者ばかりなので、連帯感がある。誰かが無理して仕事を回すのではなく、みんなが働きやすい環境をつくるという雰囲気がある」。しおざきシティ店(糸満市)の島袋愛店長(35)は女性ばかりの部署の良さを挙げる。

 入社2年目で第1子、5年目で第2子を出産。産休、育休、時短勤務を経て、入社10年目の18年に店長になった。

 順調に見えるキャリアだが、悩んだ時期もあった。やる気のある人材は積極的に管理職登用するというサンエーの方針もあり、同期は早々と店長に昇格した。一方、管理職候補として採用されたはずなのに、期待に応えられない自分。育児と仕事のバランスを取るのも難しく、退職も考えた。

 救ってくれたのは同期の言葉だった。「今は私たちがマツキヨを守るから、安心して子育てして戻ってきて。私たちが子育て期の時は愛がマツキヨを守って」。肩の荷が下り、前向きになることができた。

異なる事情

 女性に早めにマネジメント経験を積ませることで、出産後のキャリア継続のモデルをつくってきたサンエーにとって、島袋さんのようなパターンは珍しい。玉城室長は「女性と言ってもそれぞれ事情は違う。本人の気持ちと状況を確認し、個別でどれだけ対応できるかが大事」と強調する。

 女性が働き続けるために従業員の声を聞き、制度を拡充してきた。時短勤務は子どもが小学校3年生まで可能で、育休も最大2年間取得できる。「選択肢を増やすことや仕組みを改善する余地はまだある」と玉城室長。サンエーは26年までに管理職の女性割合30%、正社員の平均残業時間を男女とも20時間以内にすることを目標に掲げている。
 (玉城江梨子)


女性が結婚や出産などを機に、仕事の継続やキャリアアップを諦めざるを得ない状況が続いており、連載では女性が直面する課題を取り上げます。連載へのご意見やご感想、体験談などのメールは、QRコードを読み取るか、ファクス098(867)5607まで。


 

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