【識者談話】コロナ流行データ保管せず「米軍基地由来の可能性あった」 徳田安春・筑波大客員教授


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徳田安春氏

 2020年7月に沖縄本島中部地区の基地外で、米軍関係者と日本人が参加した大人数のビーチパーティーが行われた後、那覇市だけでなく中部地区でも感染拡大していた。このことから、東京由来だけでなく米軍基地由来の可能性もあったとみるのが当然だった。

 感染経路不明者は原則、全員ゲノム検査を実施しなければ「米軍株はない」と断言できない。だが当時のアウトブレイク(感染拡大)で陽性者のうち、何人分を解析したかなど基本的情報もなく検証さえできない。

 県内では20年7月から21年10月まで、繰り返す市中流行の波が長期間持続した。20年7月の感染拡大が、沖縄が感染拡大地域化する発端となった。米軍基地からの感染拡大への関与が見つかっていたなら、その後の対策に生かされていたはずだ。初期に十分な分析ができなかったことで、効果的な監視の機会を逃した可能性がある。

 今後も新たな変異ウイルスが米軍基地経由で広がるリスクを考えれば、このゲノム解析データは県民にとって貴重だったといえる。

 (臨床疫学)