【識者談話】まずは学校個室トイレに生理用品を(矢野恵美・琉大法科大学院教授)


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 生理は人目に触れず、個人差も大きいため、悩みを口に出しづらい。「生理の貧困」はニーズを把握するのが難しい。

 だが沖縄は子どもの貧困率が全国平均より高く、女性の非正規労働者も多いので、経済的な理由で生理用品を入手できない人がいる可能性は他県よりも高い。虐待やDVで買えない状況に追い込まれている可能性もある。ニーズは必ずある。

 行政の「配布から何らかの支援につなげたい」という思いは分かる。だが支援につなぐために、対面での配布時に氏名や居住地、生活状況などを聞く必要が出てくる。そのハードルを越えて、子どもを含む女性たちがわざわざ役所に生理用品をもらいに来ると考えるのは現実的ではない。

 支援につなげるためのニーズを把握することも大切だが、(まだ未着手の自治体は)まずは今困っている人のために、公共のトイレの個室に生理用品を置くことから始めてほしい。生理用品はトイレットペーパーと同じで、ないと困る。必要としている人は必ずいる。

 携帯や化粧品代を節約すればとの意見もあるが、これらは目に見える「付き合い」とかかわる。特に子どもは困っている状況を大人や友達には知られたくない。せめて小中高校のトイレの個室には置くべきだ。

 配布から支援につなぐにはトイレの個室に置く生理用品と一緒に相談窓口の案内カードなどを置いて、人目につかない形でアプローチするのが現実的だ。

 また、生理について性別を問わず学ぶ場をつくることも必須だ。生理痛の度合いや経血量、月経期間、必要経費には個人差があることなど基本的な知識は、全ての人が知るべきものだ。清潔な生理用品を使うことは人権の保障にもなる。公助が今やるべきことはたくさんある。

 (ジェンダー法)