【識者談話】不合理な格差を制度が固定化 上林陽治(地方自治総合研究所研究員)


社会
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 会計年度任用職員がパート化された理由はいくつか考えられる。最大の理由は、退職手当の請求権だ。フルタイムで6カ月以上勤務すると請求権が発生するが、パートには請求権がない。自治体は職員をパート化することで退職手当の支払いを免れている。

 退職手当以外にも、扶養や住居など、フルタイムは正規職員と同等の手当が支給されるが、パート化すれば自治体は各種手当を支給せずに済む。

 全国的に多くの自治体が期末手当を支給する代わりに月給を下げたが、国家的詐欺行為だ。国は待遇改善の原資として、20年度総額1700億円を地方交付税として全国の自治体に配分した。地方交付税は自治体が使い道を決められる一般財源となるため、本来は会計年度任用職員に支払われるはずの予算が、ほかに流用されている。

 ある自治体で正規と非正規の職務を分析したところ、仕事の質はほとんど変わらないのに、非正規の給与は正規の42%だった。給与に差がある理由は説明できず、不合理な格差と言える。

 非正規公務員は今まであいまいな位置づけだったが、会計年度任用職員の制度により、自治体運営を担う職員として明記された。一方で処遇は改善されず、格差が固定化されてしまった。