沖縄の美ら海、光で表現 東京パラの集火皿を製作した琉球ガラス職人の思い


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息を吹き込みながらガラスの厚さを調整する県工芸士の友利龍さん=糸満市の琉球ガラス村

 【糸満】昨夏の「東京パラリンピック」に際し、全国各地で行われた聖火リレー。沖縄県では、県民の思いを乗せた火は、琉球ガラス製の集火皿にともされた。「太陽の光を受けて輝く水面と、たゆまぬ努力で光輝く選手の姿が重なった」。集火皿を製作した琉球ガラス村所属の県工芸士、友利龍さん(42)=糸満市=は、二つに共通する「光」を基軸に、沖縄の美しい海を作品で表現したと振り返る。

 母親が勤めていたことがきっかけで高校時代から琉球ガラス村でアルバイトし、卒業後、本格的に職人を目指すようになった。

 幼い頃から海は身近な存在で、20代の頃はサーフィンに熱中。出勤の前後に近くの海岸へ足しげく通った。

 ある日、サーフィンを終えていつものように海から上がろうとした瞬間、「きらきらと揺らめく波打ち際の光景に心を奪われた」。太陽の光によって砂浜に映し出された水面の影。この感動をガラスで表現したのが、後に友利さんの代表作となる「水影」シリーズだ。

友利龍さんが手掛けた東京パラリンピックの集火皿

 集火皿の製作は、沖縄の伝統工芸で、沖縄の雄大な自然を表現できる作品を探していた県の委託業者が、友利さんの水影シリーズが最適だと推薦したため実現した。

 水影シリーズの「集大成」だという集火皿は、大海原をほうふつとさせる濃い青色のつぼに、透明のガラス生地をすじ状に巻き付け、ダイナミックな波を表現。角度によって全く異なる表情が出るよう工夫した。

 パラリンピックの聖火リレーや競技のネット中継を視聴したという友利さんは「形にとらわれない波は自由の象徴であり、選手一人一人の無限の可能性にも重なった。素晴らしい大会に携わることができて光栄に思う」と述べた。

 集火皿は県が保管しており、今後、時期を見ながら一般公開する。
 (当銘千絵)