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非正規が多いホテル業界で正社員8割 離職者減、サービスの質向上も <企業の「女性力」>9


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
ホテルパームロイヤルNAHAは約9割が正社員で、女性が多く活躍する=24日、那覇市牧志の同ホテル

 総務省統計局の就業構造基本調査(2017年)によると、沖縄の非正規労働者の割合は4割と全国で最も高く、全体の6割を女性が占めている。21年末に本紙が実施した企業アンケートでは、従業員数の過半数が女性であるにもかかわらず、組織の地位が上がるにつれて女性比率が下がる構造も明らかになった。非正規雇用は柔軟な働き方ができる一方、家庭との両立の厳しさを理由に非正規を選び、希望の職業や正社員を諦める女性も少なくない。

夢を諦める

 沖縄の主要産業である宿泊業・飲食サービス業は、非正規雇用の割合が68.2%と全産業で最も高い。ある那覇市内のホテルは、非正規雇用が7割を占め、その過半数が女性となっている。

 県内老舗のシティホテルで働く女性(54)=那覇市=は、パートタイムで勤続16年となる。専門学校を卒業後、念願の美容師として働いていたが、22歳で出産した時にフルタイムで働く厳しさを感じ、退職した。「仕事を続けたかったが両立が難しかった。当時は育児をしながら働ける環境になかった」。

 共働きで生計を立てるため、ホテルで勤めるまでにさまざまなパートタイムを転々とした。2年前、上司から正社員雇用の打診があった。子育ても一段落したため快諾したが、直後に新型コロナウイルスが直撃し、先送りとなっている。

 非正規雇用者は雇用の不安定さに加え、不況時には待遇面のしわ寄せが来やすい。女性の勤め先では数年前に親会社が変わり、パートタイムのボーナスがなくなった。

 女性が勤めるホテルの関係者は「ある同業者はコロナ禍で非正規を大量解雇したが、最近は人手不足を理由に『また戻ってこないか』と声を掛けている」と話し、業界の都合に翻弄(ほんろう)される、非正規の立場の弱さを指摘する。

正社員率80%

 ホテルパームロイヤルNAHAは、正社員率が86%と高い。女性従業員は過半数以上で、育児や出産後も長く働ける環境を整える。働きやすさが奏功し離職率は3・6%にとどまっている。

 正社員雇用は人件費がかかるが、業界の課題である人手不足に陥りにくい。責任を持って業務を遂行することでサービスの質も上がるという。データに基づく細かい料金設定で収益を最大化し、人件費を確保している。

 フロントチーフとして活躍する平良美奈子さんは「(宿泊業では)出産・育児を機に退職する人が多く、両立して働ける環境は少ない。正社員として復帰できるので働きやすいという女性の声が多い」と話した。
 (中村優希)


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