23日投開票された名護市長選は、現職の渡具知武豊氏(60)が、新人で前市議の岸本洋平氏(49)に5085票差をつけ、再選された。取材班が選挙戦を振り返った。
<座談会出席者>
▽松堂秀樹、岩切美穂、長嶺晃太朗(以上、北部報道グループ)
▽大嶺雅俊、塚崎昇平(以上、政経グループ)
▽當山幸都(暮らし報道グループ)
【勝因・敗因】無償化 市民は好反応/新基地論争に「慣れ」も
―勝因・敗因は。
B 渡具知氏は子育て無償化の実績を中心に暮らし向上を掲げたが、街頭演説でも道行く有権者の反応はよかった。
F 岸本氏も「ガジュマルの樹構想」を掲げ、名桜大への薬学部設置や子育て支援充実などを訴えてはいた。ただ、辺野古移設反対など基地問題ばかりが注目され、浸透しなかった。
E 政府に辺野古の工事を止める意思はない。基地は反対だけど「どうせ変わらないのなら…」との諦め感や、辺野古を問われ続けるある種の“慣れ”も反映された結果のように思う。
C 子育て無償化の財源は米軍再編交付金で、辺野古の問題と密接に絡む予算だ。ただ、渡具知氏は街頭で無償化に必ず言及したが、財源が米軍再編交付金であることにほとんど触れなかった。
D 岸本氏は再編交付金に頼らず無償化を継続すると訴え、財源に正面から向き合ったが、説得力のある根拠を示せなかった。
【辺野古移設】推進理由にならず
―辺野古移設の行方、市政の課題は。
B 渡具知氏は辺野古について、国と県の「推移を見守る」として賛否を明言しなかった。渡具知氏の勝利をもって、政府が工事を続ける理由とするのは違う。
F とはいえ市長の「黙認」により、その見返りに政府が再編交付金を払う構図が続き、工事も進むことになる。
D 今後の工事で、名護市長の権限が関わるものが複数ある。ただ、軟弱地盤の存在が判明し、その改良工事に必要な設計変更を県は不承認とした。渡具知氏の2期目の任期中に市長権限が問われる場面が訪れるかは不透明だ。
A 名護東道路の完成で交通の利便性は増した。一方、旧中心市街地が「素通り」されてしまうという声は多い。まちづくり対策の具体化が2期目のポイントになる。
E 再選が決まって早速、北部医療の課題である北部基幹病院の開院が2年遅れると報じられた。渡具知氏もその整備推進を公約に掲げており、名護市の果たす役割にも注目したい。