選挙イヤーの沖縄 オール沖縄に募る危機感 自公が練る「辺野古戦略」とは<明暗…名護・南城市長選>


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玉城デニー知事(中央)の就任3周年県政報告会で並び立つ岸本洋平氏(左)と瑞慶覧長敏氏=2021年12月16日、那覇市の沖縄ハーバービューホテル

 23日午後10時すぎ、名護市宮里の岸本洋平氏の選対事務所。落選が確実となりインタビューに応じる岸本氏を見守っていた「オール沖縄」幹部は、南城市長選で瑞慶覧長敏氏敗北の一報が入ると頭を抱え、しばらく床を見つめていた。「まさか南城もとは」―。

 期待の大きかった岸本氏で名護市の市政奪還を果たせなかっただけでなく、逆に南城市で現職の再選を阻まれてしまうという「2敗」は、勢力回復を期すオール沖縄にはあまりにも大きな衝撃だった。玉城デニー知事の1期目の任期が9月末に迫る中、同幹部は「知事選と首長選は違う」と声を絞り出すので精いっぱいだった。

 選挙期間中の18日、岸本陣営の選対会議は紛糾していた。政党や県議会会派、労働組合など各団体の代表が集まり、有権者への訴えの内容を協議したものの、「子育て支援策を重視すべきだ」「将来の基地被害をもっと訴えるべきだ」など主張が入り乱れ、議論はまとまらなかった。

 オール沖縄体制から保守、経済人の離脱が続き、「風頼み」(関係者)の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りとなる。会議参加者の一人は「司令塔となる人もいない。違う考え方を受け入れて巻き込もうとする姿勢も見えない」と危機感を募らせる。

 「名護市、南城市、八重瀬町と自民党が推薦した候補が全員当選した。参院選、知事選には間違いなく追い風になる」。公明との連携や企業・団体の組織力を発揮しての選挙結果に、自民党県連の中川京貴会長は満足げに語った。

 自民は県知事選のほか夏の参院選沖縄選挙区も、挑戦者としてオール沖縄の現職に挑むことになる。勢いを増す一方で、昨年内の決定を目指していた参院選の予定候補者は、年が明けた現在もまだ決まっていない。

 名護、南城両市長選の勝利で出馬に踏み切りやすい環境は整ってきたが、「全県選挙なので資金面や知名度の問題もある」(県連関係者)とし、今後の擁立作業は紆余(うよ)曲折もありうる。

 辺野古問題への対応もつきまとう。名護市長選では「県と国の係争の推移を見守る」(渡具知武豊氏)として争点化を避けたが、県連内には「全県選挙で名護のような手法は無理だ。もう少し明確に言及する必要がある」との見方がある。その上で「普天間の危険性除去を優先する立場を押し出すしかない」など戦略を練り始めている。

 年内に50の選挙がある「選挙イヤー」の第1ラウンドは自民、公明の政権与党側が完勝した。自民党県連幹部は「(知事選へ)死角が見当たらない。強いて言えば米軍の事件事故が怖いぐらいだ」と自信を見せ、2月の石垣市長選、4月の沖縄市長選でさらに攻勢をかける構えだ。

 オール沖縄の幹部は、分裂含みだった石垣市長選での候補者一本化などに起死回生の希望をつなぐ。「もう一度原点に返り、『腹七分、腹六分』の精神を取り戻すことだ」と語った。

 (’22名護市長選取材班)
 (おわり)