縁結びの「左縄」…「シマクサラー」うるまと名護で願う無病息災


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
南風原公民館の知念航さん(右)に左縄を手渡す製作者の嘉数剛さん(左)と大中区の長浜沢磨区長=1月7日、名護市の大中区事務所

 【名護・うるま】名護市の大中区とうるま市勝連の南風原公民館が沖縄伝統の儀式用縄「左縄」でつながった。南風原区が1月9日に催したマジムン(魔物)よけの儀式「シマクサラー」で、肉などをくくりつけた左縄が区の入り口11カ所に設置された。市販されている通常の縄とは逆方向に編み込まれた「左縄」を製作したのは、名護市大中区の嘉数剛さん(52)。大中区と南風原区は「縁あってつながった。今後も交流を続けよう」と誓い合った。

 南風原区のシマクサラーは古くから受け継がれてきた伝統行事。左縄は昨年のシマクサラーでは公民館に残されていた最後の1本を使用し、今年使うものは、会計の知念航さん(35)が入手先を探し歩いていた。

 1月初旬、泡瀬ビジュルから紹介を受けて嘉数さんに製作を依頼。知念さんは「肉やムーチーを飾る儀式で使われるのは左縄だということが古い資料で分かっていたが、作り手が探せず困っていた。あちらこちらに尋ね、ようやく嘉数さんにたどり着いた」と語る。

 大中区の成人会長として子どもたちに縄づくりなどを教えていた嘉数さんは、依頼を受けて金武町のわらを取り寄せた。1月6、7の両日、計8時間かけて50メートルの左縄を1人で作り上げた。嘉数さんは「重さは約3キロあって大変だったが、今後の交流につながれば」と無償で左縄を手渡した。

 左縄は1月9日、南風原区が実施したシマクサラーで使用された。区民らは月桃の葉に包んだムーチーを仏壇とヒヌカン(火の神)に供え、左縄に肉をくくりつけ、無病息災を願った。

 南風原区まで足を運んでシマクサラーを見守った嘉数さんは「別々の地域の区同士がつながる機会はほとんどない。区の地域での役割を学び合ったり、子ども同士の交流の機会をつくったりするなど、今後につなげられたら」と期待した。
 (松堂秀樹)