外国人労働者帰国相次ぐ コロナで失職、相談先なく 県内団体「再就職支援を」


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悩みを抱える台湾出身者らの相談に乗っている台湾食品専門店「台湾宝島物産」のオーナー周秀玲さん=4日、那覇市(提供)

 県内で働く外国人が、新型コロナウイルスの影響で相次いで離職し帰国している。景気の悪化により勤務先の飲食店が閉店したことなど会社の都合で職を失ったり、長期間で本国の家族や友人と会えない孤独感から仕事を辞めて帰国したりする外国人も多くいる。外国人就労を支援するNiche(ニッチ、那覇市)の次呂久由利恵代表は「困窮している外国人の相談場所をつくることや再就職の情報提供など、外国人支援の枠組みが必要だ」と訴えている。

 沖縄労働局によると、2021年10月末現在、県内の外国人労働者数は前年同期比2・7%減の1万498人だった。新型コロナの影響による新規入国の制限などで「技能実習」や「留学」の在留資格で沖縄に移る外国人が減少したことが響いたほか、高度人材の「技術・人文知識・国際業務」も微減した。

 県内に住む台湾人らが多く訪れる台湾食品専門店「台湾宝島物産」(那覇市)の周秀玲(ゾウショウリン)オーナーによると、昨年同店をよく利用していた約30~40人の台湾出身者が仕事を辞めて帰国した。「勤め先の飲食店の閉店や、派遣会社から仕事をもらえなかった人がいた。みんな悩みがあっても行く場所がなく、こちらに相談に来る」と、コロナ下の外国人の苦境を説明した。

 仕事のために2015年に沖縄に移った台湾出身の40代女性は昨年2月、父の危篤の知らせを受けて一度帰国した。隔離期間中に父は亡くなり、母を支えるため台湾での滞在期間を1カ月間延長した。日本と台湾での隔離期間の滞在費用を含め、全ての費用は約40万円に上ったという。

 女性は昨年4月に沖縄へ戻ったが、台湾にいる母と一緒に暮らすため、昨年末仕事を辞めた。今月中に帰国することを決意し、「本当は永住したかったが、帰国の利便性を考えると変更せざるを得なかった。新型コロナがなければ、仕事も辞めずに済んだだろう」と声を落とした。

 ニッチの次呂久代表は「今一番の問題は、県内の外国人の雇用や生活の実態が見えないことだ。人手不足の時は外国人人材を必要とし、コロナ禍だから外国人は必要ないとはなってほしくない」と指摘した。外国人人材が県内にとどまるには、「雇用できなくなった企業から他社へ出向できる仕組みや、副業をしやすくすることも必要だ」と提言し、その上で「再就職の情報提供や生活支援の枠組みがあれば、アフターコロナでも沖縄・日本を選んでもらえる」と確信した。

 (呉俐君)