<書評>『CONTE MAGAZINE VOL.2』「やんばる」への敬意と感謝


社会
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『CONTE MAGAZINE VOL.2』コントマガジン編 コントマガジン・2860円

 やんばるの森とは、こうも深く濃厚なものなのか。そして、かくも深く人々を魅了させるものなのか。本書は、「やんばるで暮らす、やんばるを生きる」で製茶業・養蜂業の方を取り上げ、特集の「森へ来なさい」で、森から生まれ、森に返る人々を取り上げている。

 特集では20人の方々が登場するのですが、全ての方が魅力的。やんばるに行きたくなるし、泊まりたくなるし、やんばるの地で育まれた動植物を食べたくなるし、飲みたくなるし、やんばるで生まれた布に包まれてみたいと思ってしまうのです。まさしく、本書に出てくる全ての方々に関わってみたくなるのです。そこに、自然に対する敬意と感謝が存在することがすんなり理解できるのです。それは、本書で取材している編集者・ライターの方々が真摯(しんし)な姿勢で取材対象者に向き合い、敬意をもってその生きざまや姿を描いているからだからだと思うのです。取材される側と取材する側に信頼関係が築かれていなかったのであれば、本書の素晴らしい世界は構築できなかったに違いありません。

 本書の魅力は特集だけにとどまらない。10年という、短くも濃密な時間を過ごした環ちゃんのかけがえのない笑顔の写真の数々、「歌い手として世に出てから、ずっと、誰のものにも似ていない、彼女にしか鳴らせないものであり続けている。それと同時に、とても普遍的な響きを持っている(本書より)」Coccoと、色気を帯び、生々しく唄の情感を伝える、堀内加奈子へのインタビュー記事も、読みごたえ十分。

 リバーシブルのジャケット、野趣味あふれる見返し、紙面レイアウト等、編集者的なこだわりも満載の本書。

 やんばるの森は、ユネスコの世界自然遺産に登録されたが、単なる遺産ではなく、現実に生活している人々がいるということと、前の世代から現世代、そして次の世代へつなげていかなければならない大切な存在であることが、本書を読むとわかってくる。

 (宮城一春・編集者)


 コントマガジン 川口美保氏が編集長、長嶺陽子氏が編集者を務め、山本知香子氏(アート・ディレクター)らがデザインを担っている。