【記者解説】沖縄振興特措法、改正のポイントと課題は 「強い沖縄経済」具体的な解決策見えず


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 政府が8日に改正法案を閣議決定した沖振法などの沖縄関係法は、1972年の日本復帰時に制定された沖縄振興開発特別措置法を起源とする地域振興法だ。

 復帰30年目の2002年には、旧法から「開発」の文言を削除した沖振法を新たに制定。法目的は、「本土との格差是正」から「民間主導の自立型経済の構築」に変更された。この時点で、社会資本整備は「ある程度の区切りがついた」(内閣府幹部)として、沖縄振興は、ソフト面への投資を重視する方向にシフトした。

 40年目の12年には、沖縄振興計画の策定主体を国から県に変更。県が使途を決められる一括交付金制度が創設されるなど、県がより主体的に沖縄振興を進める方向性が定められた。

 50年目となる今回の改正では、そうした大きな変更はみられないが、抱える課題はなお深刻だ。

 内閣府は、改正の根拠に、沖縄戦を経て米軍統治が続いた「歴史的事情」、離島県である「地理的事情」、在日米軍専用施設・区域の7割が集中する「社会的事情」に起因する不利性とともに、1人当たり県民所得が全国最下位にとどまる点をあげている。県経済の底上げが喫緊の課題であることは明白だ。

 岸田文雄首相はこうした課題を背景に、「強い沖縄経済の実現」を政府方針に掲げた。これを受け、西銘恒三郎沖縄担当相は8日の閣議後会見で、観光など4分野を重点検討分野とする方針を発表したが、施策に結びつくアイデアを民間から募集するとしており、具体策はみえてこない。

 沖縄振興の主体である県が7日に公表した2022年度予算案にも、県経済の起爆剤となるような事業はなかった。改正法が適用されるこれからの10年は、過去50年とは比較にならないほど激しい変化の波にさらされる。国、県、そして県民がそれぞれ「自分事」として、次代の沖縄振興に取り組まなければ、課題解決は望めない。
 (安里洋輔)