「一緒にステージかな」病乗り越えた大貫さん、佐々木団長と再会心待ち 劇団文化座「命どぅ宝」13日名護公演


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くも膜下出血で入院する大貫祥吾さん(手前)を見舞う文化座の佐々木愛さん=2018年3月3日、名護市(大貫富美子さん提供)

 【名護】「一緒にステージかな?」―。劇団文化座(東京)の座長を務める佐々木愛さんが2018年3月、くも膜下出血で倒れた名護市の大貫祥吾さん(30)を見舞い、快方を願って色紙を贈った。現在、名護市の就労継続支援施設に通う大貫さんは今月13日に名護市民会館大ホールで開催される文化座の特別公演「命どぅ宝」で佐々木さんに再会するのを心待ちにしている。

 大貫さんは東京都足立区出身。言葉を話し始めた1歳半の頃に急性脳炎になり、後遺症で言葉を失った。中学生の頃、JR東労組の活動で障がい者の社会参加を促す「虹のかけ橋プロジェクト」に参加し、文化座の舞台を観覧した。以降、何度も公演に足を運ぶなどして佐々木さんと交流を深めた。

 大貫さんは家族旅行で訪れた沖縄を気に入り、母富美子さん(56)と共に17歳で名護市に移住した。

 文化座が沖縄返還50年、劇団創立80年の特別公演として企画していた「命どぅ宝」の準備や取材などで2016年に沖縄を訪れた際は、辺野古新基地建設に抗議する市民らが集まる米軍キャンプ・シュワブのゲート前や、伊江島で土地接収への抗議行動に身を投じた阿波根昌鴻さんの足跡を取材する佐々木さんら制作陣に同行した。

 文化座制作部の国広健一さんは「人懐っこい性格の祥吾さんだが、特に佐々木さんはお気に入りのようで、会うといつもハグしてくれた。取材現場をいつも和ませてくれた」と振り返る。

大貫祥吾さん=2021年6月

 大貫さんは18年にくも膜下出血で倒れ、入院することになった。富美子さんからの知らせを受けて名護に駆け付けた佐々木さんは大貫さんの手を握って見舞い、「祥吾クンの元気な顔を見て安心しましたよ。一緒に海を見ようね! 歌をうたおうね! 一緒にステージかな?」と書いた色紙を贈った。

 大貫さんは入退院を繰り返しながら17回に及ぶ手術やリハビリを乗り越えた。現在は名護市大南の就労継続支援B型事業所us plus(アスプラス)で不自由な右手も使い、看板商品であるイモを一つ一つ丁寧に洗ったり、小瓶に色とりどりの琉球ガラスのかけらや貝殻などを詰めたアスプラスの商品「虹の小瓶」を製作したりしている。富美子さんは折に触れて祥吾さんの近況などを手紙で佐々木さんに報告している。

 富美子さんは「佐々木さんが励ましてくれたおかげで祥吾は頑張ることができている。再会を楽しみにしているようだ」と声を弾ませた。

 「命どぅ宝」の名護公演は2月13日午後1時に名護市民会館大ホールで開演される。チケットは前売り3千円(当日3500円)、高校生以下2千円。申し込みはe+(イープラス)のウェブサイトか、名護市民会館(電話)0980(53)5427。
 (松堂秀樹)