【識者談話】里親委託解除、役所都合は理由にならず 西澤哲(山梨県立大教授)


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西 澤哲(山梨県立大教授)

 「年末年始で開催のいとまがなかった」は役所側の都合であり、措置解除前に審議会を開かなかった理由にはならない。子どもの一生がかかっている可能性もあり、大人の事情でその子の人生を変えてはいけない。引き取る前に審議会で意見を聞くべきだった。

 子どもに関する行政的な施策や実施内容が適正かどうかを審査するため、児童福祉審議会(沖縄の場合は、県社会福祉審議会の児童福祉専門分科会・審査部会)は存在する。措置解除前に審議会を開くため、解除の時期自体を遅らせることもできた。その判断ができないような状況があったのか。

 里親は子を養育する監護権を持っている。里親委託の解除は監護権を取り上げることになるため、児相は里親が納得するよう説明する責任がある。里親委託の解除取り消しなどを求めて訴訟を起こしており、里親が児相の意向に納得していないのは明らかだ。深刻な事態だと捉えなければならない。国も里親家庭を増やそうと取り組んでいるが、今回のようなケースが出てくると、里親の増加を妨げる可能性がある。

 里親家庭にいる里子に、里親とは血縁関係がないと告知することは、ソーシャルワークの支援の一つだ。基本的には児相の仕事で、里親に告知を依頼することはあり得るが、児相側の主体性は必要だ。どのように告知し、フォローするかは重大事項になる。里親任せではなく、児相と里親が協働で子どものケアをする体制が求められる。
 (臨床心理学)