スポーツ庁は2021年末、全国の小学5年と中学2年全員を対象とする21年度全国体力テストの結果を発表した。新型コロナウイルスの影響で2年ぶりに実施された調査では、実技8種目の合計点で県内は中学2年を除き全国平均値を下回った。運動習慣に関する調査では、運動する時間が「減った」と答えた県内児童生徒の割合が男女ともに約6割いた。コロナ下での自粛生活や臨時休校期間などが長かったことが影響しているとみられる。自粛生活が続く中、体を動かす機会の確保に工夫を凝らしている那覇市立曙小学校の事例を紹介する。
スポーツ庁の調査では、運動時間が「減った」と答えた県内の小5男子は58・2%、女子は56・1%だった。中2男子は55・8%、女子56・9%。どちらも全国平均より高い。
曙小学校では、児童が体育に参加しやすくなる環境づくりを心掛けている。4日に実施された走り高跳びの授業では、体育館内に六つの高跳びコースを設置。小さな跳び箱やロイター板を設置したコースもあり、高跳びが苦手な児童でも競技の感覚をつかみやすくなるよう工夫されていた。
宮平安隆教諭は「今のジャンプ良いよ」「どうしたらうまく跳べるかな」などと声掛けし、児童も互いに教え合った。4年の我那覇生桜さん(10)は「分散登校などで運動不足になった。外で遊ぶこともできず、友達と動けるのが楽しい」と語った。
校内の一角には握力や前屈の測定器が設置され、いつでも計測できるようになっている。各学年の廊下には幅跳びや反復横跳び用のテープが貼られており、運動できる環境を積極的に整えている。
個々に応じた授業
那覇地区小学校体育研究会長を務める同小の田場盛博校長(60)は「子どもたちのレベルに合わせて授業を展開することが大事だ。コロナ下でもできる実践を追求する必要がある」と語る。休校などで登校できない児童に対しては、簡単にできるストレッチ動画を数種類制作し、配信している。「学校以外で運動ができず、ストレスを抱えている児童も多い。外出自粛が当たり前になった今だからこそ、学校で体を動かす仕組みづくりを進めたい」と話した。
曙小は毎年、独自に体力テストの結果をまとめている。授業以外で1日当たりの運動時間が60分未満の児童は、18年度が小学5年男子で0%、同女子で4%だった。19年度は男子が4%、女子が25%に増加。その後、新型コロナが感染拡大し、21年度は男子29%、女子が36%と運動不足に拍車が掛かった。
体力合計得点で見てみると、18年度は男子が54・4点、女子が59・0点、19年度は男子49・9点、女子52・4点と低下した。しかし、学校で体を動かしやすい環境をつくり始めて以降の21年度調査では、女子は低下が続いているものの男子は50・1点と落ち込みを抑制することができた。外出自粛や部活動の停止などで、体を動かす環境が自然と遠のく状況にもかかわらず、曙小学校ならではの取り組みが功を奏したとみられる。
(名嘉一心)