「水の流れ」軸に沖縄の日常や苦難描く なはーとで演劇「ライトハウス」


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「ライトハウス」のラストシーン。中央でいっぺい(山本直寛)がサバニをこぎ、サメの腹の中を脱出する=5日、那覇文化芸術劇場なはーと(岡本尚文さん撮影)

 那覇文化芸術劇場なはーとと劇団「マームとジプシー」の共同制作による演劇「Light house(ライトハウス)」(藤田貴大作・演出)が4~6日、那覇市の同劇場で上演された。沖縄の日常生活を描きつつ、その背後に地下水路のように流れる沖縄戦や基地問題といった苦難も表現した。

 物語は、みなと(青柳いづみ)と弟のいっぺい(山本直寛)が、いとこ(豊田エリー)を訪ねる場面で始まる。場面は「水の流れ」を軸に、自然豊かな地域から水の無い島、地下水路の流れる街などに移っていく。藤田は創作に当たり、市民とのワークショップや、沖縄でさまざまな仕事をする人々との対談を重ねた。生活者から得た等身大の言葉も脚本に生かし、食や自然、なりわいといった日常を浮かび上がらせた。

 後半は一転し、ある地下室に入ると、戦場が広がる。苦しそうな人々がさまよい、「艦砲射撃の喰(く)い残し」「海が海じゃなくなる」といった沖縄戦や基地問題を連想させる言葉が響いた。

 戦場はサメの腹の中に変わり、いっぺいはサバニに乗って脱出する。遠くに見える灯台のような人(召田実子)が「おーい、ここだよー!」と叫び“沖縄のシグナルを受け取っているか”と問い掛けているようだった。「水の流れ」というキーワードは、過去と現在がつながり、沖縄と本土もどこかでつながっているというメッセージを感じさせた。

 18日~3月6日には東京公演が行われる。藤田は「私を含め(東京の観客が)沖縄について知らないことはたくさんある。作品を入り口に『沖縄のことを知りたい』と感じてもらえたら」と話した。

 藤田が沖縄の人々から受け取った多様な要素が詰め込まれ、沖縄への強い思いを感じた。沖縄戦や基地問題については、日常とつながっていることが伝わるように、もっと人の顔が見える表現でも良かったのではないか。

 「ライトハウス(灯台)」というタイトルには、なはーとの幕開けもリンクさせたという。この劇場でさまざまなアーティストによって「沖縄」が表現され、文化や社会が活性化していくことも期待したい。
 (伊佐尚記)