島民待ってた、あったか食堂「たねび」オープン 高齢化で次々閉店「温かい物を手軽に」 宮古・多良間島


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島民の要望に応え「たねび食堂」を開店した佐久本洋平さん、宏実さん夫妻=1日午前、多良間村塩川

 【多良間】多良間村塩川に1日、島の住民待望の食堂が開店した。島で漁師をしている佐久本洋平さんと、妻の宏実さん夫妻が切り盛りする。洋平さんが捕った魚と島産の豚、京都産かつお節と昆布で取っただしがこだわりの「多良間そば」を求め、開店初日から多くの住民が訪れた。

 夫妻はこれまで、村仲筋で刺し身店を営んでいた。高齢化が進む中で島内の食堂や総菜店が閉店していった。「温かい物を手軽に食べたい」との住民の希望に応えようと開店した。そばの他にも旬の地元の食材を使った総菜も販売する。

 店名の「たねび」には夫妻の思いが込められている。洋平さんは若い頃、ペルーのジャングルで生活をしていた。朝になると隣家の子どもが種火をもらいに来る。その種火からお湯を沸かし、朝ご飯を作ることから生活が始まっていた。

 多良間島でも75歳以上の世代は家のかまどの火を絶やさないよう大切にし、家族のぬくもりを守ってきた。

 洋平さんは「小さな種火を通して世界中のどこでも同じ光景があると感じた。小さくても良いので島中の人の心が温かくなるような店にしたい」と語る。

 子ども向けに温かい肉まんやあんまんも置いている。今後は駄菓子の販売も予定する。

 宏実さんは「島の子が小銭を握りしめておやつを買いに来てほしい。子ども時代の季節の思い出の味や醍醐味(だいごみ)を知ってもらいたい」と笑顔を見せた。

 営業時間は月~土(午前11時~午後6時)、木曜は午後2時まで。日曜定休。(電話)0980(79)7104。

 (清村めぐみ通信員)