20匹超の野良猫の不妊手術、多頭飼育崩壊…地域猫活動はボランティア頼み


社会
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捕獲器を設置する「ねこと人と地域のいのちをつなぐ会」の伊波清香代表

 飼い主のいない野良猫を捕獲し、不妊去勢手術を施し地域に返す。餌をやりながら「一代限りの命」を見守る。手術を終えた猫は耳先をサクラの花びらの形にカットするため「さくらねこ」と呼ばれる。県内でTNR事業が広がる背景には、地域全体で世話をする「地域猫活動」に取り組むボランティア団体の地道な活動がある。

 本島中部の駐車場に面した茂みから、白い野良猫が顔をのぞかせる。捕獲器の中に置かれた餌をのぞき込むが引き返していく。設置したのは、ボランティアで猫のTNR活動に取り組むNPO法人「ねこと人と地域のいのちをつなぐ会」の伊波清香代表(52)=読谷村、自営業=らだ。

えさを食べる野良猫。栄養不良などで毛並みの良くない猫は、不妊手術に耐えられるように体力を回復させる必要がある =20日、本島中部(宮城隆尋撮影)

 20日に捕獲器を設置した現場は以前、近隣の人から「けがをした野良猫がいる」という情報が寄せられていた。伊波さんらが確認すると20匹を超える野良猫がいた。順次捕獲して不妊手術し、リリースしている。

 団体は猫に関する相談に対応。自治会や地域と協力してTNR活動に取り組む。リリース後の地域猫見守り活動にも協力している。けがなどで生きていくのが難しい猫や不妊手術ができない子猫などは保護し、譲渡先を探すこともある。

 一方で野良猫だけでなく飼い猫にも課題がある。室内飼いが徹底できずに猫が妊娠することや、多頭飼育崩壊の問題もある。同NPOは読谷村から助成を受け、猫の適正飼育を呼び掛ける活動にも取り組む。伊波さんは「ボランティアだけでは限界がある。誰もが身近な問題と捉え、一人一人が意識していくことで変えていけると思う。行政、市民が足並みをそろえて取り組んでいけるといい」と話した。

 与那原町の住民らでつくる「よなばるネコの会」もTNR活動に協力している。与那原町と連携し、どうぶつ基金の無料チケット枠を活用して、不妊手術の支援をする。早朝に野良猫を捕獲し、動物病院まで運び、手術後に地域に戻して餌やりも手掛ける。

 手術費用以外は会メンバーが手弁当で協力する。会の國吉富貴子さん=自営業=は「猫を救いたいと活動しているが、行政が主体的にかかわってほしい」と要望する。飼い主のモラルも重要とし「飼うなら一生という覚悟と、完全室内飼いをするという意識を持ってほしい」と望んだ。

(宮城隆尋、高江洲洋子)