子どもたちの卒業、進学の門出を祝って、何ができるかなと考えた時、困った時には助けを求めること、安心できる場所があることを知っていてほしい、その一つが包括的性教育だと私は考えています。私は15年前に性教育に出会い、その考え方にびっくりしました。性教育は性のことや体のことだけなく、自分を大切にすること、自分の人生を決めること、そして他者との違いを尊重することだと知ったからです。
「障害者に優しくしましょう」と学校で習うことはありますが「人が一人一人違うのは当たり前で、自分も助けを求めていいし、お互いを大切にしましょう」と学ぶ機会は少ないと思います。しかし科学的に見ると、差異はあっても、人はみんなそれぞれに違っています。違いが当たり前という包括的性教育の考え方に感動しました。
また同じ経験をしても、一人一人の感じ方は違うので、まわりに合わせるのではなく、自分が嫌なことには嫌と伝えていいと学びます。嫌なことがあっても、子どもだから、女性だから、障害があるからと、気持ちを伝えることをためらったり、諦めることがありますが、性教育では人は誰もが対等で、嫌と言うことこそが大切だと考えられています。
性教育の活動をする医師のご夫婦・アクロストンさんの「10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック」(ほるぷ出版)に、私も障害のある人の性について書かせていただきました。この本は「変わるカラダのいろいろ編」「性とココロのいろいろ編」の2冊セットです。
体のいろいろな毛が生えてきた時の悩みや、ヒゲの剃り方、おりものの対処の仕方、ナプキンのつけ方、捨て方。恋やデートについて。さまざまな性のあり方や、性暴力なども網羅されていて、身近な困りごと、悩みごとの解決につながる一冊です。困った時の相談先も載っています。
ポップなイラストもかわいく、いろいろな特徴があるキャラクターに、見ているだけでワクワクします。小学校高学年、中学生だけでなく、大人が学ぶ一冊としてもおすすめです。
いろいろな子どもが手に取れるよう、学校や地域の図書館に2冊セットでリクエストしていただけたらありがたいです。助けの求め方を学ぶチャンスのなかった子どもたちが、この本を通して、自分の悩みを解決したり、人に相談できることを願います。
いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。