【記者解説】陸自受け入れ表明を市長職務と判断 裁判長「市長の本分といい得る行動」


社会
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宮古島市上野野原の陸上自衛隊宮古島駐屯地=2021年(資料写真)

 宮古島市の陸自駐屯地の用地取得を巡る収賄事件で、前宮古島市長の下地敏彦被告(76)を有罪とした22日の那覇地裁判決。小野裕信裁判長は、現金600万円を渡した贈賄側の元社長(65)の供述や行動、配備計画受け入れまでの経過などの事実関係から収賄罪が成立すると判断し、被告の無罪主張を退けた。

 公判では(1)受け入れ表明が職務に当たるか(2)職務に関する対価か(3)賄賂の認識の有無―が主な争点となった。小野裁判長は自衛隊配備は地域への影響が大きいとし、受け入れの是非についての判断は「政治家である市長にしかなし得ない、本分ともいい得る行動だ」と指摘。市長の職務と判断した。

 公判で「市民の生命財産を守り、国防にも大いに貢献すると思い決断した」と述べ、表明は個人の考えを述べたにすぎないと強調した下地被告。判決は「元社長の陳情によって市の方針がゆがめられたとはうかがえない」としつつも、結果的に元社長の会社の土地が売却され、謝礼の趣旨で現金が渡されたと指摘した。

 汚職事件に発展し、被告の逮捕直後には配備計画自体に市民らから疑問の声が上がった。判決は「市長という立場にあったにも関わらず、市政の公正さへの市民の期待や信頼を大きく裏切った」と犯行を非難した。自身の責任を見つめ直し、判決を真摯(しんし)に受け止める必要がある。

 (前森智香子)