今月18日に開催された審議会に意見書を提出した、本島南部在住の里親の50代男性が、24日までに本紙取材に応じ、思いを明かした。これまでの養育経験から、男性は児童相談所と里親間の意思疎通の不十分さを挙げ「子どもの幸せを第一に考え、児相と里親が子の将来を話し合う場があるべきだ」と訴えた。
男性は里親に登録して13年。妻と共に、これまで一時保護や養育で4人の子どもを家庭に迎え入れてきた。きっかけは、当時児相に務めていた知人からの誘い。制度の説明を受け「どうにか子どもたちを救えないか」と迷わず研修に進んだ。現在は2人の子どもを養育している。
子どもが伸び伸びと暮らせるよう「怒るときは怒り、褒めるときは褒め、子どもに向き合っている」。夫妻の実子で20代の息子も、預かった里子をきょうだいのように見守ってくれた。
以前共に暮らしていた里子の1人は、実親との面会交流や外出などを重ねた。その過程で子どもの変化に気付いた。「実親について話す機会が増えていった。その頃から、実親の元へ帰る準備ができていると感じると同時に、私たちの心の準備もできていく」
一方、過去に一時保護した里子は、子どもの特徴などを知らされないまま預かることになり、不安や戸惑いもあった。3カ月後、子どもは引き取られた。里親支援専門相談員からのケアで支えられた面もあるが「心の傷は完全には癒えない。引き取られる際はたった2分での別れ。その対応が癒えない傷につながっている」と視線を落とした。
小橋川さんの事案を巡っては、委託解除前に有識者らでつくる審議会が開かれていなかった。
「年末年始で開催のいとまがなかったという理由にショックを受けた。今回の対応には問題があったのではないか」と疑問視。その一方で「私たちは児相がどれだけ多くの案件を抱えているか分からない。今回の件が児相全体の批判につながってはいけないと思う」と話した。
里親の立場上、今回の事案に対し声を上げることが難しい現状もあるという。「今預かっている子どもが突然措置解除されないかと心配もあって、静かに経過を見守る里親もいると思う」と考えを巡らせる。
審議会には「里親と児相が協力関係を持ち、小橋川夫妻の願いをかなえていただきたい。県が子どもの味方であることを願う」と意見書を提出した。
小橋川さん夫妻の訴えは、里親の現状が社会に伝わる契機になったと感じている。里親制度や里親家庭を取り巻く状況を多くの人が知り、仕組みの改善につながることを望む。
「里子には、実の子どもと同じように愛情を注いでいる。だからこそ、委託解除など子どもの環境が変わる時は、児相から十分な説明があってほしい。児相と里親が対峙(たいじ)するのではなく、子どもの幸せを第一に、意見を交わせる場が増えることを願っている」
(吉田早希)