昨年2月に航空自衛隊那覇基地から有機フッ素化合物PFOS(ピーフォス)、PFOA(ピーフォア)などを含む泡消火剤が流出し、基地外に飛散した事故から、26日で1年がたった。9月には、流出事故に関係する水槽とは別の泡消火専用水槽からも高濃度のPFOSが検出されたと発表され、全国の自衛隊施設で同様の水槽を調査している。那覇基地では流出事故以前から土壌が汚染されていた可能性も指摘されている。事故を機にさまざまな課題が浮かび上がり、汚染の全容把握や対策は道半ばだ。
想定外の検出
自衛隊は当初、泡消火剤にPFOSは含まれないと認識していた。だが本紙が原田浩二京都大大学院准教授に現場で採取した泡の分析を依頼したところ、PFOSなどが検出された。報道を受けて自衛隊も調査しPFOS含有を認めた。要因として、PFOSを含む消火剤から非PFOS消火剤に交換する際、配管を洗浄しなかったため、配管内に残っていたPFOSが破損箇所から流出したと説明した。
那覇基地内の消火設備は8カ所あり、それぞれ消火剤原液を保管するタンクと水道水の水槽がある。使う際には消火剤と水を混ぜて噴射する。9月にPFOSなどの検出が発表されたのは、消火剤と混ぜる前の水だ。消火剤タンクと水槽はつながっているが、逆流防止のバルブがある。PFOS検出の原因は特定できなかったという。
防衛省は民間専門機関に依頼し、全国の自衛隊施設約60カ所で泡消火専用水槽約230カ所を調査している。担当者は「年度内に分析結果を得る形で進めている」と話した。
識者「土壌調査を」
那覇基地は昨年3月から今年1月にかけて基地内の水路で計5回の水質調査を実施したが、指針値を超えるPFOS・PFOAが検出され続けている。那覇市は「指針値を超える場合は原因究明と対策に取り組むこと」を要請したが、同基地は取材に「(非PFOS薬剤への)入れ替えや処分はやる。個別具体的にそれ以上やる計画はない」と答え、消極的だ。
基地内の水路で指針値を超えるPFOS・PFOAが検出されていることについて、原田准教授は「過去に泡消火剤を使ってきた結果、土壌が汚染され、水路に染み出していると考えられる。消火剤を使う訓練などをした場所で土壌調査をすべきだ」と指摘する。市は当面、水質調査を求め続ける予定だが、市議会からも土壌調査を求める声が上がっている。
(伊佐尚記、明真南斗、斎藤学)