【那覇】那覇市真地で洋菓子店「パティスリー・ランヴォール」を営む福里優二さん(38)が、洋菓子職人の父親に追いつき追い越すために試行錯誤を重ね開発した「息子のアップルパイ」が好評だ。しっとりとした生地の食感に程よい甘さのリンゴのシャリシャリした歯ごたえが絶妙にマッチし、一口食べたら病みつきになること間違いなしだ。
福里さんの実家は、アップルパイで有名な那覇市の老舗洋菓子店「ハッピー洋菓子店」で、父は創業者で現会長の政男さん(73)。3人きょうだいの末っ子に生まれた優二さんは幼少の頃から店の手伝いに駆り出され、クリスマスシーズンは調理場で寝ることもよくあったという。「ショーケースの横が一番暖かかった」と、昔を思い出して笑う。
小禄高校を卒業後、東京の専門学校で1年間製菓作りを学んだ。卒業後は県内の有名リゾートホテルで見習いとして働き始めた。数カ月後には現場リーダーを任された。6年間務めた後の2009年ごろ、家業を継ぐために実家に戻った。
最初はホテルとまちの菓子店との環境の変化で思うような商品を作れなかった。その後、猛勉強し、家業の味を再現できるようになったが、政男さんとの間でたびたび意見が衝突。オリジナルの商品を開発したいとの思いも強くなり、2014年12月、けんか別れの形で独立した。
独立後は苦難の連続で何度も経営難に陥った。知名度もなく「ゼロから(店に)行列ができるようになった父ちゃんの偉大さが改めて分かった」。経営難を打破すべく思い付いたのが父を超えるアップルパイ作りへの挑戦だった。使用する生地、リンゴの品種などさまざまな試行錯誤の末、昨年12月、父の技法と自身の技法を融合した新たなアップルパイが完成した。「父ちゃんを超えるアップルパイを作ることが自分なりの親孝行。いつかは父ちゃんの店に負けないくらい行列ができるお店にしたい」と力強く語った。
(吉田健一、写真も)