空き家対策はトートーメーから…久米島、預け先つくり賃貸促進 島の挑戦(下)<人口減社会を生きる>8


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
トートーメーが残るため人に貸せない空き家対策として建設された「久米島町納骨堂」=2021年12月、久米島町

 普段人は住んではいないが、トートーメー(位牌(いはい))があるため人に貸せない空き家問題は、離島や本島北部の過疎地域で共通の課題だ。「毎年100人の減少」に危機感を抱く久米島町は空き家対策に向けて、2021年5月に永代供養ができる共同墓や位牌を預かる機能を持った「久米島町納骨堂」(町比嘉)の運営を開始した。空き家対策で納骨堂を造るのは県内で初めてとなる。

 現在、位牌を3年間預かる「位牌壇」の受付8件を含めて、計77件の申し込みがある。町の19年の調査で155軒の空き家が確認された。町担当者によると、利用者から「位牌を預けることができたので、空き家を人に貸せるようになる」など反応もあった。

 町は16年5月に移住相談のワンストップセンター「島ぐらしコンシェルジュ」を立ち上げた。全員が残り続けているわけではないが、これまで135人の移住につながった。大田治雄町長は「毎年100人の人口減は非常に大きい。人口減に歯止めをかける『久米島モデル』をどうにか築きたい」と強調した。

 町民が危機感を抱くようになったのは、入学者減を受けて09年に持ち上がった県立久米島高校園芸科の廃科計画だ。町は同校への山村留学制度を立ち上げ、計画を延期させた。町営の寮と塾も設置し、町内外から進学しやすい環境を整える。

 これら過疎化対策を担うのは主に総務省の地域おこし協力隊員らだ。協力隊員は昨年11月時点で県内各地に53人おり、3割に当たる県内最多の17人が久米島町にいる。

 県地域・離島課の山里永悟課長は町が県内で最も過疎対策に力を入れているとみる。「『失敗を恐れずにとりあえずやってみる』の精神が強い。われわれ行政は上からの指示を受けて仕事をするが、町は若手に仕事を任せている。若手が物おじしない風通しの良さがある」と評した。

 行政を後押しする住民の存在も大きい。「人口減少に歯止めをかける」が最大のテーマとなった町の第2次総合計画(16~25年度)策定には市民グループ「ドリー部チャレンジ」が関わった。これをきっかけに住民、行政、議会が一体となって人口減対策に取り組む機運が高まった。

 「ドリー部―」では移住サポートや子育て支援などを実施する約10チームが立ち上がり、コロナ禍前までは活発に活動していた。まとめ役の一人、宇江城久人さんは「住民が自主的に動くことで人口減への危機感が広まった。行政にも意見が通りやすくなり、今、久米島は島外から移住しやすい環境になっている」と説明した。

 大田町長は「離島ではどこも同じような課題を抱えているが、住民と行政が一体となって施策展開をする必要がある」と語った。

(梅田正覚)