7月に予定される参院選に向け、自民党が沖縄選挙区に擁立する新人候補者が、県出身で元総務官僚の古謝玄太氏(38)に内定した。有力と目された人物の固辞が続く中で白羽の矢が立ち、選考作業に急浮上した古謝氏。県連内でもほとんど知る人がいなかった無名の若手ながら、県出身で東大卒のキャリア官僚経験者という「今まで沖縄にはなかった」(島袋大県連幹事長)経歴に期待値は高い。現職の伊波洋一氏(70)の再選支援を本格化させる「オール沖縄」陣営からは「候補者として強いのか弱いのか未知数だ」とノーマークの対抗馬に戸惑いや警戒感が広がった。
自民の参院選候補者選考を巡っては当初、党本部が前宜野湾市長の佐喜真淳氏の擁立に向けて水面下で働き掛けを強めていた。だが、県知事選に再度挑戦するという決意が固い佐喜真氏の翻意は得られず、先行きに不透明感が漂っていた。
選考作業が不調に終わった場合に、県連幹部が「責任」を取る形で出馬するという対応含みで、県連会長の中川京貴県議や同幹事長の島袋大県議も選考対象に名を連ねていた。ただ、与野党で伯仲する県議会の構成や全県区における知名度などから、県議の擁立論に慎重な雰囲気もあった。
その状況で急きょ浮上したのが在京の古謝氏だった。「常に心は沖縄にはせてきた」(古謝氏)と、以前から政治家への転身の道に関心を示していたことから、西銘恒三郎沖縄担当相(衆院議員)が参院選出馬へアプローチしていた。
佐喜真氏とは別に有力視されていた男性医師からも参院選出馬を固辞されたことを受け、国会議員団や県連幹部の中で古謝氏の擁立を模索する流れが出来上がった。
古謝氏本人が決意を固めたことで、めどとしていた自民党大会までの候補者決定にこぎつけた。県連幹部は「できるだけ若い世代の擁立を目指していた。当初から想定された道ではないが、結果的に目標は果たせた」と胸をなで下ろす。
官僚経験後に地元の知事選や国政選挙に出馬して、政治家に転身するコースは全国的にはよく見られる。だが、県内では見られなかったパターンとあって、自民と対峙(たいじ)する「オール沖縄」には「沖縄の政治土壌で受け入れられるのだろうか」という指摘もある。
オール沖縄幹部は「演説のうまさなどが分からないので、(対立候補としての)評価は難しい。ただ経歴もあるし、その上若い。見せ方次第では強敵ではないか」と表情を引き締める。
自民党県連は難航していた参院選の候補者選考が一段落したことで、参院選の直後に実施される県知事選の選考作業を本格化させる。再選出馬が濃厚な玉城デニー知事の対抗馬として、佐喜真氏のほか、古謝氏と同様の県出身官僚など新たな人材の起用を探る動きが水面下で出てきた。
県連関係者は「4月には知事選の候補者をある程度絞った上で、関係団体に諮りたい」と述べた。今回の参院選候補者の選考は、県内で政治人材の多様化や世代交代が進むきっかけになる可能性もある。
(大嶺雅俊)