【深掘り】政府、復帰式典で沖縄重視を強調 にじむ「選挙イヤー」対策


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 政府は8日、沖縄の日本復帰50年となる5月15日に、沖縄と東京の2会場で記念式典を県と共同で開催することを閣議了解した。岸田文雄首相の沖縄会場への出席も発表された。2会場開催と首相の沖縄会場出席は、県の要望を受け入れた形だ。一方で、今年は県知事選を天王山に重要選挙が続く「選挙イヤー」。首相が沖縄での式典に出席することで、沖縄重視の姿勢をアピールしたい政府の思惑がにじむ。

 松野博一官房長官は8日の会見で、首相の沖縄会場出席について「国民全体で沖縄の歴史に思いをいたすとともに、沖縄の魅力や可能性を国内外に発信する本来の開催趣旨を踏まえ、参列する」と意義を強調した。

 政府は松野氏を本部長とする実施本部を8日付で設置。内閣府に準備室を立ち上げるなど、復帰式典を“国家的事業”として鮮明に打ち出す。

 しかし、祝賀ムード一色となる県と政府共催の復帰記念式典に、県内では危惧や疑問の声は少なくない。沖縄の自己決定権の確立などを目指す「命どぅ宝!琉球の自己決定権の会」は2月、復帰式典に対して「日本『復帰』50年をどう検証・総括したのか全く疑問」などとする抗議声明を発表している。

 野党国会議員は「県民の民意を無視する形で辺野古新基地を推進する首相が沖縄に来ることに、手放しで喜べないとの声や雰囲気がある」と指摘する。

 政府は、県民が反対する米軍普天間飛行場移設に伴う辺野古新基地建設を続け、東アジア情勢の厳しさを理由に先島諸島に自衛隊基地配備を進めるなど、県民の負担感が一層増している。その一方で、政府の2022年度沖縄関係予算は3千億円を下回るなど前年度から減額し、新基地建設阻止を掲げる県政への“冷遇”も目立つ。

 復帰から半世紀の節目に、知事選など選挙戦に向けたアピールにとどまらず、沖縄が長年にわたって抱える基地問題にどう向き合うのか、政府の姿勢が問われている。
 (問山栄恵)