【識者談話】県立中の男女同数定員 ジェンダー平等に反しかねない(成定洋子・沖縄大教授)


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成定洋子氏(沖縄大教授)

 男女同数の定員設定は一見すると入学者数のジェンダーバランスは取れているように見受けられる。しかし女子に対して実質的に不利に働く可能性があり、ジェンダー平等の理念に反しかねない。男子の志願数が女子を上回れば男子にも不利に働く可能性がないとは言い切れない。

 佐賀の県立中では、女子の入学者数が男子を上回り、女子が多いと教育活動に支障を来すと学校側が問題視したことから、2010年度に男女同数の定員制を導入した。男子が多く、女子が少ないことは当然とされてきた一方で、男子が少なく、女子が多いことは問題視されやすいジェンダーの二重規範も背景にあるように思われる。その後、22年度から「能力や適性以外の性別で区別する必要はない」と、男女同数ずつの定員制を廃止することになった。公立高校の男女別定員を設けていた東京都は、段階的見直しを経て男女合同定員制に移行すると昨年発表した。男女別定員制は全国的にも廃止の傾向にある。

 学校をめぐるジェンダー平等を実現するためには、教育現場だけでなく、教職員の考え方、組織の在り方などがジェンダー化されている可能性があることを考慮する必要がある。

 その上で、性別による区別によって受験生や入学生を含む、どのような生徒に対しても不利益が生じたり差別的な扱いがなされたりしないよう、具体的な改善策や対応策を随時検討していくことが望まれる。(ジェンダー研究)