「もったいない」認識しているが…地下ダム水放流の解決を阻む壁


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20年間1日5500トン…地下ダム水を海に放流 水道水に使える水なのになぜ? から続く

 【八重瀬】八重瀬町の慶座(ぎーざ)地下ダム水の使用方法は水道水と農業用水の2通りある。水道水の管理は南部水道企業団、農業用水は沖縄総合事務局が担い所管が分かれている。そもそも使用される前の地下ダムにたまった水は誰が管理しているのか、大量放流をどこが対応するのか。取材班が総合事務局に尋ねると担当者は回答に悩んだ末、企業団と総合事務局の「両者」と答えた。

■“縦割り”対応

 一方、企業団は地下ダム水の管理について、「ダムは総合事務局の所管なので」との見解を示した。いわゆる“縦割り”の対応で、地下ダム水の管理責任の所在があいまいなまま、問題が放置されている。地下ダム水は法的にも課題があることが分かった。管理者を定める法がなく「水利権」があいまいなのだ。

 元総合事務局職員で、地域開発論が専門の沖大・沖国大特別研究員の宮田裕さんはダムを造った「総合事務局が責任を持つべきだ」と指摘する。「地下ダムは国費を投入して国の責任で進めた事業だ。総合事務局は『造った後は分かりません』と言っているようで、行政の不作為だ」と批判した。さらに「法がないなら、内部指針を策定して対応できる。指針で責任を明確化することが管理する上で重要だ」と説いた。

■放流を減らすには

 「もったいないという認識はある」。企業団と総合事務局の担当者は、地下ダムの水が海に放流され続けていることについて見解を問われ、こう語った。おきなわ環境クラブの下地邦輝会長は、放流は地下ダム完成直後の2001年ごろから始まったと見ている。地下ダムの水は硬度や硝酸態窒素などの値が高いため、県企業局の水で薄めている。下地会長は放流の解決策として「硬度低減化施設」の導入を提案。硬度を下げる施設を整備することで、希釈する必要がなくなる。地下ダムの水をもっと活用できるようになり、放流も解消可能という。

 一方、企業団はコスト面で施設の導入に難色を示す。低減化施設の建設だけでも約10億円がかかる。仮に施設を建設した場合、水道料金を値上げせざるをえず、町民に負担を強いる可能性もあるという。そのため海への放流はやむを得ないとの認識を示す。

 下地会長は県企業局と連携を図ることで、コスト面などの課題は解決できると反論。放流は、20年余にわたり特に問題にならなかった。「誰も指摘してこなかったことこそが問題だ」と強調した。
 (照屋大哲)

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