宮古馬を守りたい…研究者、ボランティアで牧場へ 血統図作成し最優秀賞 日本ウマ科学会


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最優秀発表賞受賞を大城裕子教育長(左端)に報告した増田未央子さん(左から2人目ら)=2月25日、宮古島市役所

 【宮古島】昨年12月に開催された日本ウマ科学会の第34回学術集会で、宮古島市の荷川取牧場スタッフの増田未央子さん(44)が最優秀発表賞を受賞した。増田さんは、宮古馬の近親交配を避けるために、宮古馬の家系情報再構築の基礎となる研究に取り組み発表した。

 2月25日、市役所で開かれた受賞報告会で増田さんは「多くの人の力のおかげ。注目されることで宮古馬が増えることにつながればうれしい。研究を現場に還元したい」と笑顔で話した。

 日本ウマ科学会は1990年に発足した。畜産学や獣医学に限定することなく広くウマについて学術的に検証、研究する日本で唯一の学会。第34回学術集会は昨年12月1~10日、ウェブ上で開催された。

荷川取牧場で飼育する宮古馬「アグリ」に乗る増田未央子さん=2020年9月、宮古島市下地の与那覇湾

 モンゴル農業大学で野生馬の「モウコノウマ」研究に取り組んだ経験がある増田さんは、2018年に絶滅の危機にひんしている宮古馬の現状を知った。「何か力になりたい」とボランティアで荷川取牧場のスタッフとして働き始めた。

 かつて島民の暮らしを支えてきた宮古馬は、22年1月現在で約50頭(島内48頭)しか残っていない。増産が必要だが、近親交配が進み血が濃くなることでさまざまな問題が生まれる可能性が出ている。

 増田さんは、岐阜大学が13年にまとめた宮古馬の近親交配を避ける必要性を唱えた論文や研究者らが19、20年に採取した血液などを基に研究に取り組んだ。

 血液からDNAを抽出し遺伝型を割り出した上で、宮古馬保存会に登録されている親子データを基に個体識別と親子関係の再鑑定を図り、血統図の作成と家系情報を再構築した。「これまでの集団放牧による自然交配では親子判定が困難だった。研究結果を基にできる限り縁戚関係にある個体を掛け合わせることで、遺伝的に多様性のある繁殖に取り組める」と解説した。

 受賞報告会で宮古馬保存会会長も務める大城裕子教育長は「100頭を目標に計画交配を立てている。研究結果は貴重な資料になる」と感謝した。宮古馬が抱える現状は、繁殖計画だけではなく、人手や放牧地、資金などさまざまなものが不足している。増田さんは「健全な宮古馬の繁殖にむけて、今後も市に支援をしてもらいたい」と願った。

(佐野真慈)