世界的に需要の高まる電動アシスト自転車を、県内で製造する計画が進んでいる。JOeB(那覇市、松原哲社長)はうるま市の国際物流拠点産業集積地域に約1万2千平方メートルの用地を取得し5月に製造工場を着工、12月の完成を目指す。受注生産専用で国内の高い技術と環境対策を両立させ、翌2023年3月に稼働させる。自転車の一大生産地・台湾や東南アジアに近い立地を生かして海外に販路を築き、年間100万台以上の生産を視野に入れている。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、感染リスクの低い移動手段として自転車、中でも電動アシスト自転車の需要が世界的に高まっている。
松原社長は、かつて中国・天津で自転車製造工場を経営。コロナ禍以前から国内の高い技術力を生かすことで需要がつかめると見通し、2018年に会社を設立し、準備を進めてきた。調査の中で台湾に近く部品供給面でメリットがあり、海外輸送も台湾と日程的に差のないことから沖縄を生産拠点に選んだ。
21年には静岡県藤枝市に技術開発本部を設置し、大手輸送機器メーカーの元技術者らが研究開発に従事する。モーターレースなどにも生かされた知見を基に、厳選した国産アルミを素材にした高精度のフレーム製造に取りかかっている。
塗装の際のフレーム下地処理や塗料自体に有害物質が含まれない工法を取り入れる。大規模の太陽光発電を設置し、二酸化炭素排出抑制も努める。協力工場で生産された試作品は今月9~12日に台湾・台北市で開催の自転車見本市にも出展している。
事業資金については、沖縄振興開発金融公庫や鹿児島銀行などから20億円以上の融資が決まっているという。また、琉球海運とも業務提携しており、同社船舶を活用し、台湾やシンガポールへの製品輸送も構想する。
松原社長によると、工場設立時には50人以上の雇用を計画している。高価格帯を中心に当面は年間30万台の生産を目指す。「将来的には新たな工場を立ち上げ、年間100万台以上は生産したい。雇用も500人は必要になると思う」と展望を語った。
JOeBの動向に工場が立地予定のうるま市も注目しており、自治体が長期の無利子資金を融資する制度の活用も検討している。市産業政策課の担当者は「国内でもほとんどない電動アシスト自転車の工場。雇用はもちろん、市内のサイクルツーリズムとの連携もできるのではないか」と期待感を示している。
(小波津智也)