【本部】沖縄美ら島財団は8日、サメの体液を模した人工羊水の中で、深海ザメの一種「ヒレタカフジクジラ」の胎仔(たいし)を出生サイズまで育成することに世界で初めて成功したと発表した。
同財団では2017年からサメの胎仔を母体外で育てるための人工子宮装置の開発に取り組んでいる。2020年10月、沖縄美ら海水族館へ搬入されたヒレカタフジクジラの死亡個体から2尾の胎仔を摘出し同装置に入れた結果、約5カ月間育成することができた。全長はこの間、1・5倍になるまで成長し、胎仔の特徴である外卵黄が完全に収容され、出生サイズまで成長した。
胎仔への環境ストレスを軽減することを目的に開発した「人工羊水」を使用。尿素を高濃度で含み、浸透圧と塩濃度が胎仔の体液とほぼ同じになるよう調整した。
今回の研究に携わった財団総合研究センターの冨田武照さんは「類似した研究がなく、ゼロから研究をスタートさせた」と振り返る。人工子宮装置も手作りだという。「将来的には絶滅が危惧されているサメの人工繁殖などにも役立てたい」と意欲を示した。
研究成果をまとめた論文は2日、科学誌「Frontiers in Marine Science」に掲載された。人工子宮装置内で育成中のサメの胎仔は美ら海水族館の「サメ博士の部屋」で展示している。
(長嶺晃太朗)