多様性尊重へ、沖縄の課題とは? HIV診療と司法福祉から考える ソーシャルワーカーシンポ㊤


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 シンポジウム「沖縄における多様性尊重への課題―ソーシャルワーカーが取り組むことは―」(県ソーシャルワーカー協議会主催)が2月26日、オンラインで開催された。「第10回県ソーシャルワーク学会・社会福祉公開セミナー2021」の一環。医療現場や司法福祉、学校現場など、それぞれの分野で活動する4人が現状や課題を報告した。その内容を2回にわたって詳報する。1回目は県感染症診療ネットワークコーディネーター・新里尚美さんと社会福祉士・白石嘉彦さんの講演を紹介する。 (嶋岡すみれ)


HIV正しい知識を 新里尚美さん(県感染症診療ネットワークコーディネーター)

新里 尚美さん

 HIV感染者が必要な診療や福祉サービスが受けられるよう、関係機関とのネットワークの構築などをしている。

 今はHIVに感染しても、症状が安定していれば3カ月に1回の通院、1日に1回の服薬で治療ができる。患者は男性が8割で、その多くは就労している。

 HIVは「LGBTの病気」「不特定多数と性的関係を持った人の病気」と言われることがある。だがそれは違う。ウイルスは人を選ばない。「特定・不特定」も関係ない。正しい知識を持ってほしい。一方で、確かに患者の中には性的マイノリティーの人もいるため、HIVと性の多様性の問題については、切っても切り離せない。そして、性の多様性が認められていない現実があることを知ってほしい。患者は病気と性的マイノリティーへの偏見や差別で、二重に苦しんでいる。

 沖縄では同性パートナーが入院した時に、そのパートナーが症状説明や面会を認められないことがある。だが厚生労働省のガイドラインでは「親族に限らず本人の申し出を優先する」としている。また個人情報保護法の解釈によれば、本人の同意があれば、第三者に情報提供してもかまわないことになっている。それでも、同性パートナーには認めないということが、実際に起こっている。

 間違った知識や情報、固定観念から生まれる偏見や差別に苦しんでいる患者や家族がいることを理解してもらい、ソーシャルワーカーとして何ができるのか、皆さんと共有していきたい。


罪の背景理解が必要 白石嘉彦さん(社会福祉士)

白石 嘉彦さん

 司法福祉の立場から、罪を犯した高齢者や障がい者、生活困窮者の支援に携わっている。弁護士と協働して更生支援計画書を作成し裁判に証人尋問で出廷したり、医療・福祉機関と連携しながら、地域での生活が可能なように働き掛けたりする。

 被害者がいることは絶対に忘れてはいけない。だが罪を犯した人の中には、各種医療・福祉サービスへ適切につながらず犯罪、再犯に至った人も少なくない。貧困や障害、支援者不在、依存症などの理由で生きづらさを抱えている。それは育った環境に左右されていることが多い。

 支援方針としては、一人一人の複雑に絡み合った背景を理解し、一貫性を持って継続的に関わることが重要だ。それには司法的な対応では限界がある。行政、医療、社会福祉との共通認識の元での連携が必要だ。

 社会復帰後は(1)支援を急がない(2)受容と共感(3)得を与えて罰を与えない―ことが大切だ。私たちは環境調整と本人理解に焦点を当てて支援する。どんな人でも必ず良いところ、力がある。その力を発揮する環境調整が必要だ。変わるかどうか決めるのは本人自身だと感じている。

 社会に戻った後は社会の中で生きていく権利がある。それをそっと支えてあげるのが一番重要だと思う。

>>多様性を認める学校づくりとは?ソーシャルワーカーシンポ㊦