【深掘り】濃厚接触者の県議、出席どうする?県の規制緩和、議論に影響も


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新型コロナウイルスの濃厚接触者の本会議出席の可否を巡り議論する県議会議会運営委員会=14日、県議会

 新型コロナウイルスの濃厚接触者となった議員の本会議出席を認めるかどうかを巡り、県議会で議論が続いている。「議決権」を尊重する立場から、濃厚接触者でも採決への参加を条件付きで認めるようにする対策案が提起されているが、感染拡大防止の観点から全会派の一致は見ていない。一方、一般事業所での濃厚接触者の特定作業や出勤制限は求めないとする規制の緩和が、24日の県対策本部会議で決定される方向となり、議会の議論にも影響を与えそうだ。

 地方自治法上、議場にいることが「出席」になると解釈され、議決権を行使できる。県議会(定数48)は与野党の議員数が議長を含めて与党24、野党・中立24と拮抗(きっこう)し、濃厚接触者の取り扱いが議案の可否を左右する可能性もある。

 県議会が2020年8月に策定した新型コロナの対応指針は、議員が濃厚接触者となった場合、検査が陰性でも2週間の自宅待機を求めている。県内の新規感染者数が高止まりする中、開会中の2月定例会では県議が濃厚接触者となったり、家族が濃厚接触者になったりすることで出席できない議員が出ている。

 一方、医療系職種国家試験や大学、高校入試などでは条件を満たせば濃厚接触者の受験を認めている。県政与党から、県議会でも濃厚接触者の議員が議決権を行使できるための検討について議論の提起があり、会派間で話し合いが続いてきた。

 県議会事務局は(1)初期スクリーニングで陰性(2)本会議当日も無症状(3)公共交通機関を利用せず、密集を避けて入場(4)賛否が分かれる議案の採決のみ―の4条件を付して出席を認める案を各会派に提示していた。

 14日の議会運営委員会(當間盛夫委員長)では、「議決権行使」の重要性を踏まえるなどとして与党4会派と中立の無所属の会が事務局案を容認するとした。これに対し、野党の自民、中立の公明からは「1年に一度、一生に一度の受験などと一緒に考えるべきではない。集団感染となった場合の責任は誰が取るのか」(西銘啓史郎氏・自民)など、議決権の重みに理解を示しながらも難色が示された。

 家族に濃厚接触者がいるなどの「濃厚接触者疑い」についての取り扱いも含め、議論を持ち越した。22年度一般会計予算案などの採決がある2月定例会最終日の30日までに、結論を得たい考えだ。

 非常時の議会運営に詳しい新川達郎同志社大名誉教授(地方自治論)は「全国的にも珍しい議論だ。コロナの研究も進む中、議会の機能をどう果たすか、リスクを抑えながらどう議決していくかを探求する前向きな動きと捉えられる」と評価する。本会議をリモートで実施できるよう法改正を望む地方の要望もあるとし、「その動きを触発することにもつながるのではないか」とした。

 徳田安春筑波大客員教授(臨床疫学)は「可能であれば当日も検査で陰性確認すべきだ」と指摘。その上で「現在のフェーズでは既にワクチンも治療薬もあり、評価できる動きだろう。検査態勢を拡充し、格安で、迅速に検査結果を提供しながら社会活動を回す『ウィズ検査』が推奨される」との見解を示した。

(大嶺雅俊、明真南斗)