沖縄・奄美を世界自然遺産に推薦するため、米軍北部訓練場での協力体制について日米両政府が交わしたとされる合意文書の原本を、調査団体インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)の河村雅美代表が外務省と環境省に開示請求したところ、冒頭の1ページは黒塗りされ開示されなかった。黒塗り部分は合意内容、期日、署名者などが書かれていたとみられる。請求により、文書が日米合同委員会の下にある環境分科委員会の覚書であることが判明した。
沖縄・奄美の世界自然遺産登録を巡っては、日本政府は2017年に推薦書を提出したが、ユネスコの諮問機関は18年、北部訓練場の返還地が含まれていないことなどを問題視し、登録延期を勧告した。日本政府は19年に推薦書を再提出し、21年に登録が認められた。
今回、河村氏が開示請求したのは、19年の推薦書の中で日本政府が存在を示した文書。環境団体は延期勧告の「宿題」に応える文書とみて重視するが、推薦書には「世界遺産推薦地の保全へ特段の配慮をすることが重要であるとの認識を共有した」とする抜粋のみが記され、原本はなかった。
河村氏は昨年11月に外務省と環境省の双方に開示請求し、同12月に両省から回答を得た。外務省は同文書を「環境分科委員会覚書及び報告書」と特定した上で、冒頭ページを黒塗りで不開示とし、推薦書に掲載済みの英文を開示した。環境省は不開示とした。いずれも不開示理由に「公としないことを前提とした米国との協議」であることを挙げた。
環境省によると、環境分科委員会は、日米双方の課長級以下の職員が出席する。推薦書で示された「合意文書」は、担当者レベルで協議した覚書の可能性がある。
河村氏は「推薦書に示されている日米の協力体制を担保する文書の信憑性は、より疑念を持たれることとなった」と指摘した。
世界自然遺産の問題に取り組む環境団体グループ「オキナワ・エンバイロメンタル・ジャスティス・プロジェクト」の吉川秀樹代表は「文書の内容や期日、署名者が不明だと、きちんと履行されているか検証できないし、責任の追及もできない」と話した。
(稲福政俊)