今回の県内地価は前年比でプラス幅が拡大となっているが、実態としては消費の急激な伸びなど経済指標の好転があったということではない。それでは何が変動率を引き上げたということになるが、どちらかというと、新型コロナの収束への期待に伴う県民や法人のマインドの高まりが背景にあったと思われる。
住宅地は人口増に加えて世帯分離も進んでいることから、郊外の一戸建てやマンションの需要が潜在的にかなり高いとみている。西原町や北中城村などは値頃感があるとして、那覇市から引き合いが流れている。また、交通アクセスが良くないとされてきた既存集落の中に住宅メーカーが木造住宅を開発する傾向がみられる。そうしたところでも住宅需要の強さを実感する。
商業地においては昨年と同じ傾向だが、観光客を対象とする店舗が多い地域は家賃や地価も頭打ち感が強い。一方で、郊外で地元客を相手にする地域ではそこまで客足が落ちず、需要は底堅い。元々引き合い自体はあるので、上昇に転じている。1階を店舗にし、2階から上階をアパートにしている事例も多く、アパートはコロナ禍でも需要があるので、収益面でも底堅さがある。
コロナの影響はいまだ続き、オミクロン株の新規感染者数は下げ止まっている印象だ。沖縄の将来性、成長力がもちろん高いとみられているものの、先行きの不透明さが続く中で、下落はないと楽観視することもできない情勢だ。
(濱元毅氏、不動産鑑定士 地価公示分科会代表幹事)