「子の意見大切に」  委託解除問題で20代元里子の思い  自身の経験重ね、県対応疑問視


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取材に応じた元里子の女性。「幸せかを決めるのは本人自身。子どもの意見が尊重される世の中になってほしい」と語る=9日、本島内

 生後2カ月から養育していた児童(5)の里親委託が解除された那覇市の小橋川学さん夫妻が、児童の一時保護先を夫妻にするよう求めている事案を受け、元里子で県内在住の20代女性が23日までに本紙取材に応じた。里親家庭で育った女性は、援助方針の決定に子どもの意見や気持ちは考慮されていないと感じてきたと振り返り「何が子ども本人のためになるのか、周囲が真剣に考える必要がある」と訴えた。

 幼い頃から里親家庭で育ち、成人を迎えた。里親とは血縁関係がないと知らせる告知は、措置委託された当初から里母を通し伝えられた。3歳からは、実親との面会が始まった。

 学校生活が楽しく、小学校高学年になると徐々に面会から足が遠のいた。自らの意思で面会を断っていたが、児相の担当者からは、実親の元に戻ることや再度面会を勧める声が掛かっていたという。「里親の元にいたいけど、急に(児相への)一時保護になったらどうしようと怖かった。車で連れて行かれたら、どうやって抜け出そうか考えたこともあった」

 今年1月、児相が小橋川さん宅から児童を引き取る様子をテレビで目にした。当時の不安がよみがえった。「子どもにとって突然の一時保護は恐怖で、親だと信じる人が泣いているのを見たら、さらに不安になったと思う。全ての情報は知らないが、一時保護をそこまで急いだ理由は何だろうと思った」と振り返る。 3月初め、今回の事案に関する県議会審議をオンラインで視聴した。県側は、一時保護や里親委託などの援助方針の決定には子どもの意見を尊重することが求められるとしつつも、今回は児童の年齢などにより意向確認が難しいケースだったと説明した。

 22日に発表された県の審査部会のコメントでは、児童を夫妻に委託することを「難しい」と判断した。女性は「行政の説明があまりにも曖昧で、子どもが環境に適応し、前向きだと判断した根拠が分からない。児童にはどう説明したのか。告知を踏まえて、きちんと説明できたのだろうか」と疑問を抱く。

 5歳の頃の自分を振り返ると、周囲の大人や友人、里親など多くの人に見守られてきた。その環境が、自分の成長や自立につながっている。「里親家庭で育ち、多くの人と関わりが持てたことで今の自分がある。子どもの意見や里親を大切にする社会であってほしい」と強く願った。 (吉田早希)