11日で東日本大震災から満11年を迎えた。発生当時、多くの人が身を寄せた避難所では、アレルギーのある患者に対応した食事がほとんどなく、食事の確保が難しい事例があったという。こうした災害を想定した対応や食料備蓄について、日本アレルギー学会専門医の佐藤優子医師(ちばなクリニック)と、県内の支援団体「沖縄アレルギーゆいまーるの会」のアドバイザー、田村磨理さんらは、薬や食料の準備を勧める。
佐藤医師によると、気管支喘息(ぜんそく)やアトピー性の子どもは、災害時の疲労や寒暖差、ほこりや汗などにより、症状が悪化することがある。アレルギー症状は個人差が大きいので「普段の治療や症状が悪化した時の対応について日頃から主治医と相談しておくことが大切」と話す。
災害時に持ち出す非常用袋には1~2週間分の治療薬を準備し、定期的に入れ替えることを推奨している。
■非常用袋
食物アレルギーのある子どもにとっては、災害時の食料の確保が重要となる。東日本大震災では、食物アレルギーの子どもたちが避難所で提供されるパンや弁当を食べることができず、食料の手配に苦慮することが多かったという。災害時用としてアレルギー対応食品を備蓄している地域はまだ少ないとして、少なくとも1週間程度のアレルギー対応食を非常用袋に常備することを推奨している。
重篤なアレルギー症状を起こすアナフィラキシーに備えるため、緊急時自己注射「エピペン」を携帯することも重要だ。さらに、アレルギー情報や治療薬、緊急連絡先などを記載した「アレルギー緊急カード」のほか、保険証や薬手帳を持ち出せるようにしておくことも呼び掛けている。こうした準備は災害時だけでなく、大型台風や水害、停電、新型コロナウイルス感染症拡大における自宅待機時にも役に立つという。
■楽しみながら
田村さんはゆいまーるの会の活動とともに、糸満市潮崎でアレルギー対応食品を販売する「かめさん商店」を運営している。アレルギーのある人でも食べられるアルファ化米やレトルトカレー、非常食セット、お菓子などの豊富な対応食品をそろえている。「おいしい品目も増えているので備蓄しながら、時々家族で食べる『ローリングストック』で継続してほしい」と、楽しみながらの備蓄を勧める。
家庭内の備蓄は個人で可能だが、自宅以外で被災した場合、自助では限界がある。そのため、行政によるアレルギー対応食品の備蓄を訴えている。田村さんは「みんなが一緒に食べられる備蓄に切り替えれば、管理も配布もしやすい」と訴える。また、避難所で炊き出しを行う際には卵、乳、小麦、エビ、カニ、そば、落花生など特定原材料7品目を使わない上で、食材の品目を掲示することを呼び掛けており、「患者本人が食べられると判断できるように情報提供をお願いしたい」と話した。
(嘉陽拓也)