【記者解説】被害訴えあったのに安全性強調…空自の泡消火剤流出 詳細公表せず


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
航空自衛隊那覇基地から流出した泡消火剤=21年2月26日、那覇市高良

 昨年2月に航空自衛隊那覇基地から泡消火剤が流出・飛散した事故で、近隣住民から健康被害の訴えがあったが、防衛省、自衛隊は公表してこなかった。航空自衛隊が使用している消火剤について、製造元が発行した資料は、目や皮膚への刺激を挙げて注意を促している。2020年4月に米軍普天間飛行場から大量の泡消火剤が流出した事故では、消火剤に接触した海兵隊員が皮膚炎や吐き気、呼吸困難を訴えたことが米軍の報告書に記されている。

 那覇基地から泡消火剤が飛散した事故の直後、自衛隊は有機フッ素化合物の一種PFOS(ピーフォス)含有を否定し、「毒性や損傷性はほとんどない」と説明していた。だが、その後の琉球新報の報道によって、製品の毒性に関する製造元の注意事項があることや、実際にはPFOSを含んでいたことが判明した経緯がある。

 米軍普天間飛行場から民間地域に泡消火剤が流出した事故の際には、米軍は接触などを控えるよう報道機関を通して呼び掛けた。自衛隊はこうした注意喚起をしていないどころか、誤った認識に基づいて安全性を強調したことになる。

 消火剤の影響で生じる可能性がある健康被害について、原田浩二京都大大学院准教授(環境衛生学)は「泡消火剤にはPFOSやPFOAだけでなく、刺激性のあるものなど、さまざまな成分が入っている。その影響も考えられる」と指摘した。

 自衛隊は情報公開請求によって住民から健康被害の訴えがあったことは認めたが、症状や程度、泡消火剤成分との因果関係、賠償対応の内容について非公表としている。

 当初から情報が十分に提供されていれば、住民が身を守ったり体調を管理したりする上で留意につながった。一連の対応は、県民の安全や健康を守る上で十分な情報共有や透明性が抜け落ちていることを浮き彫りにしている。

(明真南斗、伊佐尚記)