【豊見城】18日の豊見城市議会2月定例会最終本会議で、市民生活に直結する医療費や給食費の予算が削除され、2022年度予算が成立した。市が提出した予算案に、多数を占める野党が削減した修正案を提出し、野党の賛成多数(賛成14、反対7)で可決した。野党は10月予定の豊見城市長選を意識し、壇上から「市長選で市民に信を問おう」と繰り返し主張した。
市は高校生までの通院・入院の医療費無償化に2650万円、小中学生の牛乳代1200円を助成する給食費の段階的無償化に1億100万円の予算を計上していた。
財源には企業や個人からの寄付、ふるさと納税や市税の一部を積み立てる「こども未来基金」を充てる計画だった。基金の積立額は約3億円あり、そこから習い事に助成する予算なども含め約2億6千万円を今回の無償化などに活用する予定だった。習い事助成などの予算は通ったものの、医療費や牛乳代は見送られた。
野党はこの基金を「不安定財源だ」と批判した。寄付金やふるさと納税は景気や社会情勢によって納付額が左右されるとして、安定的な事業継続ができないと訴えた。また、1999年に市が「財政非常事態宣言」をしており、現在も解除できていないと指摘。財政が厳しい中での市税の一部使用も問題視した。このままでは23年度以降の予算が組めなくなるとして、「無償化は(市長の)選挙運動だ」と語気を強めた。
一方、与党は「市民から無償化を期待する多くの声がある」と反論した。「市の昨年度のふるさと納税額は6億3千万円超で県内1位だ。企業などからの寄付は400万円超が寄せられた。市税を含め三つを組み合わせれば安定して継続できる」と訴えた。
ある野党市議の一人は無償化の予算案を削除したことで「支持者からも批判的な声がある」と吐露した。今回の採決は「山川市政の追い風になる。われわれにとっては厳しいと承知している」との見方を示し、その上で「それでも行政を監視するのが議員の役目だ」と語った。
対して与党市議の一人は「市民に直結する大事な事業を野党は『政争の具』にしている。市長の公約を達成させたくないとの思いありきでの修正案だ」と野党の姿勢を批判した。
現時点で、山川仁市長も野党側も市長選への出馬表明はしていない。
(照屋大哲)