【深掘り】地位協定、歯止めなき「容認」…外務省沖縄大使、問われる存在意義 米軍の名護湾訓練 


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 米海軍のヘリコプターが名護湾でつり下げ訓練を実施していた問題で、地元の名護市議会が提供施設・区域外の訓練禁止を求める意見書を可決する中、外務省沖縄事務所の橋本尚文沖縄担当大使は訓練が禁止行為に当たらないとの外務省の立場を明らかにした。日米地位協定室は琉球新報の取材に、実弾射撃を伴わない「一般的な訓練」であれば、米軍施設・区域外でも訓練は実施できると説明。日米地位協定をなし崩しで拡大解釈し、米軍の自由使用の範囲と県民の基地負担が歯止めなく拡大している。

 28日の社民党県連の抗議の席で、橋本氏は「東京に確認した」内容として、提供施設・区域外の訓練容認を説明した。一方、提供区域外の訓練禁止を求めた要求などについて、橋本氏は「東京に報告する」とした。

 現場となった名護湾は漁業や観光利用も盛んな場所だ。28日の名護市議会の決議でも、米軍訓練は提供区域に限定されるとして、「民間人の安全を確保するための仕組みを無視して訓練を行った」と日米地位協定などの違反を強調している。

 決議・意見書案を提案した比嘉勝彦市議は、橋本氏の発言に対し「国際法規を逸脱したような解釈だ」と批判する。「名護湾での米海軍訓練も、対中国で日米共同防衛の動きが見え隠れする。共同訓練が拡大し、沖縄全体が演習地域として扱われる状況も起こりうる」と懸念した。

 米軍は、那覇軍港への航空機離着陸や訓練空域外での低空飛行など、従来にない訓練使用を激化させている。米軍による沖縄の自由使用とも言える状況を日本政府が追認する中で、沖縄担当大使の役割の形骸化も指摘される。

 外務省沖縄事務所は1997年に、当時の橋本龍太郎首相の肝いりで開設された。2017年の開設20周年記念行事では、当時の外相だった岸田文雄首相が「在日米軍の安定的駐留のためには地元の理解がなければならない」と語り、「これからも大使と沖縄事務所を通じ、沖縄の皆さんの声に耳を傾けたい」と強調していた。

 名護市議会の大城秀樹議長は、橋本氏の発言への言及は避けた上で「やってはいけない場所での訓練で、万一事故が起きたら大変だ。守るべきことはしっかり守って、市民を安心させるやり方をしてほしい」と求めた。
 (塚崎昇平、岩切美穂)


外務省沖縄大使、米軍の域外訓練を容認 識者「地位協定の拡大解釈」