林外相、米軍の区域外訓練容認  沖縄県「拡大解釈」と反発


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名護湾で低空飛行し、ホバリングや人のようなものをつり下げる米軍ヘリとみられる2機=22日午後5時47分、名護市

 米海軍のヘリコプターが22日に名護湾でつり下げ訓練などを実施した問題で、林芳正外相は29日、「実弾射撃等を伴わない米軍機による各種訓練については、提供施設・区域外で行うことは認められている」と述べ、実弾射撃を伴わなければ米軍基地外での訓練を容認する日本政府の立場を明らかにした。これに対し、提供区域外での訓練の禁止を政府に求めている県は、米軍がどこでも訓練ができるようになる日米地位協定の拡大解釈だとして、政府の見解に反発を強めている。

 林氏は29日の閣議後会見で、基地外での米軍機による訓練を容認した上で、「航空機の運用に当たっては公共の安全に妥当な考慮を払うのは当然のことだ」として、訓練に際して事前通告が必要という認識も示した。今回の名護湾の訓練で日本政府への事前通告がなかったことを明らかにし、「地域に与える影響を最小限にするように申し入れを行った」と米側への対応を説明した。

 外務省沖縄事務所の橋本尚文沖縄担当大使も28日に、本省に確認した日米地位協定の解釈として、提供施設・区域外での米軍機の訓練を容認する発言をしていた。
 一方、外務省は「『どこで訓練をやる』という規定は地位協定にはない」(日米地位協定室)と述べ、基地外での訓練を容認する根拠となる明文規定はない。

 林氏の発言を受け、謝花喜一郎副知事は琉球新報の取材に「提供施設・区域を設定している意味がなくなっている。それを追認すると、(在沖米軍基地使用条件を決めた5・15メモなど)日本復帰時の取り決めは何なのかと問いたくなる」と問題視した。「沖縄だけの問題ではなく、日本全体が米軍の思うままになる。主権について国会もしっかり議論してほしい」と主張した。
 (安里洋輔、塚崎昇平)