沖縄振興特別措置法(沖振法)など沖縄関係法の改正法が1日から施行された。ただ、いずれも旧法の小幅な改善や現状維持にとどまり、10年前の旧法制定時に創設された一括交付金制度のような目新しいものはなかった。
沖縄振興の根拠法である沖振法は、日本復帰50年の節目での改正だが、「沖縄の自立的発展」を目指す法の目的などは、2021年度までの旧法から引き継いだ形だ。沖縄振興開発金融公庫も、期限の10年延長を規定した公庫法の改正で存続が決まった。
政府は沖縄振興の方向性について、1人当たり県民所得が全国最下位にとどまる点などを克服すべき「課題」としている。政府方針にも「強い沖縄経済」の構築を掲げており、低迷する県経済の底上げを至上命令とする姿勢がうかがえる。
沖振法改正ではこの点を踏まえ、「特区・地域制度」の課税特例の要件に「従業員給与増」を加え、「子どもの貧困」などの5分野や、「離島・北部地域」の振興について努力義務を新設した。
一方で、法案審議の過程で衆参両院で付帯決議が採択された「鉄軌道」の導入については、明確な進展はなかった。日本復帰から半世紀の法改正として目玉にもなると目されたが、旧法で初めて明記された「整備検討」からの発展的な改正は見送られた。
沖縄の経済停滞を招く一因と指摘されるのが、公共交通網の整備の遅れだ。定時性が担保される交通インフラの整備で県経済を活性化させることが、改正法が目指す沖縄の「自立的発展」を促し得る。改正法が、沖縄戦を経て米軍統治が続いた「歴史的事情」など、沖縄の特殊事情を踏まえた「不利性」の解消を目的としている点にも留意しなければならない。
改正法成立を受け、国は新振計の「基本方針」の策定を本格化させる。導入の障壁になり続ける「コスト」と「収益性」以外の側面にも目を向ける姿勢が必要だ。(安里洋輔)