【識者談話】沖縄の自主性尊重に課題、政府の裁量大きく(宮城和宏・沖国大教授)


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宮城 和宏教授

 本国会で成立した改正沖縄振興特別措置法(沖振法)は、これまでの沖振法と同様に法の目的として「沖縄の自主性を尊重」とうたっているが、政府の裁量が大きい構造的課題は温存された。

 引き続き知事の新基地建設問題に対する政治姿勢で予算が増減するとみられる。「沖縄の自主性を尊重」の理念を最も具体化し、県と市町村が協力して配分額を決める一括交付金は減額され、政府裁量で市町村に予算配分できる「沖縄振興特定事業推進費」などの予算補助は増額していくことが予想される。

 一括交付金が減っても代わりの予算補助が増え続ければ、県と市町村の間の協力関係は弱まる。各市町村には予算補助獲得のための抜け駆けのインセンティブ(誘因)が強まる。政府に忖度(そんたく)して予算補助を獲得した市町村は短期的に得をするが、沖縄全体では長期的にマイナスとなる。

 本土復帰50周年の節目を迎え、低調ながらもポスト「沖縄振興体制」の議論も出てきた。特措法をやめ、他県と同様の過疎法などを活用しつつ、基地跡地などの問題解決を目指す声もある。

 だが基地から派生し続けている環境汚染などの問題や基地があり続けることによる機会損失は、これらで対応できない。それに政府は沖振法がなくても引き続き予算補助制度や再編交付金などを設け、県内の分断策をとり続けることができる。

 沖縄の振興は、沖縄の自治を尊重する沖振法本来の理念を担保・強化する方向を目指すべきだ。一括交付金の積算根拠は法に明記して見える化し、事業採択の決定権も国から県に移すことが望ましい。

 沖縄は日本による強制的併合から始まり、沖縄戦と米軍統治、基地集中に至る独自の歴史的経緯を経験した。沖縄人には本来、自己決定権があることを踏まえ、沖縄に他府県と異なる制度を設けることの理解をしてもらう必要がある。(経済学)