「楽シーサー」「勇まシーサー」 表情豊かな擬人化シーサーが話題に 作陶家・田中さん


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 【沖縄】3日は沖縄の魔よけや守り神として暮らしの中に根付き、親しまれている「シーサーの日」。作陶家・田中順子さん(63)=沖縄市諸見里=はシーサーをメインに生み出している。ユーモアにあふれ、個性豊かな擬人化シリーズのシーサーが話題を集め、多くのファンを獲得している。

さまざまなシーサーの展示コーナーで空手シーサーを手にその魅力を語る田中順子さん=3月25日、沖縄市のギャラリー嬉楽

 「楽(たの)シーサー」や「嬉(うれ)シーサー」のほか、エイサーの「たくまシーサー」、空手の「勇まシーサー」、ハーリーの「りりシーサー」、三線とパーランクーを手にした「夫婦(みぃーとぅ)シーサー」などフォームや色彩、表情、衣装などバラエティーに富む。見ている人をわくわく、ちむどんどんさせてくれる。仕事場を兼ねたギャラリー「嬉楽(きらく)」では、これらシーサーたちが出迎えてくれる。

 作品には言葉遊びも込められているが、創作は独自の宇宙観、感性が紡ぎ出す。それだけに「型」に閉じ込めた作品はなく全て一点物だ。

 結婚後、東京で書家を目指していたが、かわいがってくれた祖母の85歳のトゥシビー(生年)祝いにシーサーを贈りたいと思い立ち、陶芸教室で基礎を学んだ。その後、独学で腕を磨く。「子どもの頃は活発で、実家の屋根のシーサーに飾り付けなどして遊んでいたことがよみがえった。それが陶芸の道に進むきっかけ。シーサーは友達のような存在だった」。2007年に沖縄に戻り、翌年には地元にギャラリーを開設した。

 当初、守護神としての神秘性が宿るシーサーを擬人化した作品を批評する声も聞こえたが、見る人たちを楽しませるという信念は揺るがなかった。次第に評価され、各地で展示会を開催してきた。

 現在はヤールー(ヤモリ)やフクロウ、招き猫、小地蔵や観音像、コロナ禍の終息を願ったアマビエなど、作品づくりの世界を広げている。

 「人生は一度きり。思いっきり楽しんで気楽にゆこう」がモットー。愛らしい小型の作品がほとんどだが、ファンからは「作品から沖縄の文化、歴史、風習の一端なども学べる」と好評だ。田中さんは「手に取って触れて、共感してもらえるのが作陶の一番のエネルギー。挑戦を続けます」と進化に意欲を見せていた。

 シーサーの日に関連して沖縄市のアンテナショップ「コザ工芸館ふんどぅ」では、3日から今月末までシーサー作家を中心にした作品展を開催する。ギャラリー嬉楽の営業時間は午前11時~午後6時。定休日は日、月曜。問い合わせは(電話)098(987)9009。

(岸本健通信員)