<書評>『戦後沖縄の政治と社会』 「保守」「革新」がもたらしたもの


社会
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『戦後沖縄の政治と社会』平良好利、高江州昌哉編 吉田書店・2970円

 沖縄の日本復帰は、極度の時間的制約のなかで準備し、明確に日時を決め、琉球政府の制度を日本のそれに「完全かつ瞬時に融合」、沖縄県を発足させるという、「至難の業」であった。

 2022年はこの復帰から50年となるが、米軍に統治された復帰前27年の2倍弱の期間、日本の一県としての政治と社会を経験したことになる。

 本書は、その経験を検証した共同研究の大きな成果で、復帰後を中心とする戦後沖縄の政治と社会を対象としており、「保守」と「革新」を切り口とした。

 戦後沖縄政治は、「保守」の成り立ちや思想的傾向と、「革新」の他府県と比べて長期にわたった一定の勢力の維持や存在感の発揮に、その特色があろう。

 本書の前半は社会に関わる論文で、台湾や韓国との比較の視点を導入しつつ、復帰前にさかのぼって人民党を分析することを通して検討した沖縄の反共社会の程度(高江洲昌哉)、1960年代半ば以降の日本資本を含む外資導入政策をめぐるUSCARと琉球政府との相違(小濱武)、そして復帰後の沖縄における保守論壇に着目して考察した「豊かさ」の捉え方の変容(秋山道宏)を内容とする。

 後半は政治に関わる論文で、復帰時から2000年代に入るまでの沖縄の自治体外交、特に県政の党派性と台湾・中国との関係(小松寛)、沖縄県政における保革の「政権交代」が県庁の部長級以上の幹部人事に与えた影響(川手摂)、国政の変化のなかで政党の本部と沖縄にある支部との利益の衝突が起こった場合の沖縄政治のあり方(平良好利)、そして沖縄における保革対立を超えた共通の基盤に着目して分析した戦後沖縄政治構造の変化(櫻澤誠)を内容とする。

 実証性が高く、射程の広い論文ばかりで、筆者は特に、川手論文から読み取れる国との関係性に注目した。

 復帰後の沖縄県庁では、技監に建設官僚を迎えた他には、部長級以上に中央省庁からの出向者はいなかったようだ。他府県では官僚が副知事になることも多々あり、こうした「純血主義」は興味深い。

(黒柳保則・沖縄国際大教授)


 たいら・よしとし 1972年生まれ。中京大准教授。著書に「戦後沖縄と米軍基地―『受容』と『拒絶』のはざまで 1945~1972年」など。

 たかえす・まさや 1972年生まれ。神奈川大等非常勤講師。著書に「近代沖縄の歴史経験と変遷する歴史像」(『歴史学研究』949号)など。